手抜き星食計算 (1) | 池袋駅南口の天文計算

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二回に渡って星食(掩蔽)計算にどの程度の精度が必要か考えたのですが結論としては

  視赤経・視赤緯に影響をおよぼすすべての要素を考慮する必要がある

ということになりました。つまり年周視差だろうが日周光行差だろうが影響があります。

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そこでちょっと不精なことを考えてみます。

星食のとき恒星が月を追い抜く形になります。相対位置だけ考えると。あるときAにあった恒星はしばらく経つとBに行って見えなくなります。E点で潜入が起きるわけですがとうぜんこの点では月の中心から月の視半径だけ離れていることになります。
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もし、仮に、観測地での恒星と月の正確な視赤経・視赤緯がわかればA点での月までの角距離とB点での角距離を補間して角距離が月の視半径と一致する時刻を算出すればいいことになります。

どうやって視赤経・視赤緯を調べるかは後回しにしてこの方法でいいのか確認してみます。

8月12日にスピカ食がありましたのでこれについて話を進めます。

手順は以下のとおりです。

球面三角の公式を覚えてないので計算は方向余弦の内積から角距離を求めるという原始的な方法です。
潜入の時刻は18時48.1分と予測されていたのと結果がたいした精度じゃないことはわかっているので18時48分、49分の値から線形補間で求めています。より精度の高い計算ができるようになったら3点以上で計算して補間します。

0.観測地は三鷹(国立天文台)とします。

1. (ひとまず手元にある)ステラナビゲータでスピカ(α Vir)の視赤経・視赤緯と月の18時48分、49分の視赤経・視赤緯を調べます。

2. 18時48分と49分のスピカと月の方向余弦を求めます。

3. それぞれの時刻のスピカと月の方向余弦の内積を求めそれから二つの天体の角距離を求めます。

4. それぞれの角距離から線形補間で各距離が月の視半径になる時刻を求めます。

(結果)赤経・赤緯はJ2000です。これにはちょっとした理由があります。
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計算結果は18時48分+0.0分になりました。つまり0.1分違います。

月の赤経・赤緯が恒星の赤経・赤緯に比べると精度が一桁低いです。この有効数字では星食の時刻を1秒の精度で予測することはできないのですが、これよりもっと重大な問題があります。

月の視半径の有効数字が3桁しかないことです。48分と49分で角距離は0.19'しか変わっていません。もし潜入の時刻を0.1分の精度で求めようとすればとうぜん月の視半径の値は小数点以下二桁必要でしょう。

(計算式)
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(続く)
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参考
  長沢工  「日食計算の基礎
  長谷川一郎天文計算入門
  渡邊敏夫 「数理天文学」 (内容未確認)
  藤沢健太日食の計算
    (基準面(ベッセル日食要素)は既知であるという前提で書かれています)

  「せんだい宇宙館 - 星食(Occultation)
    「ビデオ観測の方法

  「天平の森天文同好会 星食観測のページ