神社 | 群衆コラム

群衆コラム

耳目を惹きつけて止まない話題の数々。
僭越ながらお届けいたします。

東京は日本橋。

見上げるような近代的なビルに囲まれて

小さな神社がある。



小さいわりに立派な朱の鳥居があり、

狭いながらも境内がある。

この神社、

見ているとぱらぱらと人が訪れては

参拝している。

いつ見ても参拝しているのは

一組だけ。

でも途切れることなく人がやってくる。



うちの近所にあるお稲荷さんは、

人通りの多いところにあるわりに

参拝する人がほとんどない。

かくいうわたしも参拝したことがない。

鳥居をくぐって中まで入ったにもかかわらず

そのまま出てきてしまった。

そんなわたしがなんとなく

参拝してみようかなという気になって、

日本橋の小さな神社でお参りをした。



不思議なものである。

お願いごとがあったわけでもない。

信心深いわけでもない。

なのにお参りしようかなという気にさせるのだこの神社は。



なにがよかったのか。

たぶん、感じがよかったのだ。

ビルに囲まれてそこだけひっそりとしているところが。

小さすぎず大きすぎないところが。

夜になるとささやかな照明があり、荘厳な感じがするところが。

ホテルへの帰り道にあり、お参りに手間がかからないところが。

そういうところぜんぶ合わせてかんじがよくて、

おまいりしたらなんか気持ちがよさそうに思えたのだ。



おそらく古くからあるものではない。

比較的最近誰かがそこに建てたのだろう。

お店でなくて神社を建てた。

そのバランス感覚が絶妙で、

いい神社と思った。

お願いごとはなかったけれど、

お参りできてよかった。