数年前、ある抜歯即時インプラントの3日間コースに出た。

講師陣は、5名以上おり、その中には10年以上前から存じ上げている歯科医師 A氏もいた。
当時の A氏は温厚かつ謙虚な人柄で、私が尊敬する歯科医師だった。
しかし、それから時は流れ久々に会話する A 氏は、以前とは全く異なるキャラクターになっていた。

どうも世の中に安易にインプラントをする歯科医師が増えて、経過不良な事例が出てきたことに怒っていることが彼の講演からうかがえた。
また、別の講師 B氏は、盛んに自分の症例でうまくいったものを出す。

ただ、この研修はあるインプラントメーカーC 社が後援しているので、その C 社のインプラントのことを良く言うのは必然だった。

このセミナーでは参加者が自分の症例を発表するのだが、重箱の隅をつつくようなどうでも良いことをネチネチと指摘される。
例えば、2本入れたインプラントが平行でないと、これはもっと平行にいれなければダメだとか言われる。
しかし、反論させていただくと、そもそもインプラントは骨のあるところに入れるのだが、骨の量が足りないところも存在する。
骨のあるところを狙って入れれば、2本のインプラントが完全に平行でないことなど普通にあるし、それで予後に影響があるかといえば、全くそんなことはない。
そんなことを言ったら、オールオンフォーのように極端に傾斜させて入れるインプラントなどは、すべてダメなインプラントになってしまう。

最近知ったのは、その講師だった B氏が、このインプラントシステムを使うのを止めたことである。
これには あきれた。
ただ、このように、あるインプラントの認定講師だった歯科医師が、そのインプラントを使わなくなり、他のインプラントに移るということは、しばしばある。
20年前の私だったら、ある研修に出ると、やたらテンションが高くなって、もう明日からでもこれをやるのだ!という意気込みで材料を買い込むということがあった。
しかし、最近は分別がつくようになったのと、第3人称で自分を見れるようになったため、衝動買い的な決断をすることが少なくなった。
俺も成長したな。