「もう死にたい…。」

ユリは、そう言いながらベッドへ寝転びました。


元気を取り戻して、彼氏を探していたユリ。

この人!と思える人に出逢い、付き合い始めたものの…。

彼に「他に好きな人が出来た…。」と、フラれてしまったのです。


「ねえ、ライト?」


「なあに?」


「どうして私が好きになる人は、私の元から去っていくのかな?」


「相手があることだからね。仕方ないんじゃないのかな。」


「また、そうやって冷たい言い方をする!
ライトは、たまにとっても私を傷つけるんだよ!」


「それだよ、ユリ。」


「ん?どういうこと?」


「僕はユリを傷つけてなんていないよ。ユリが勝手に傷ついただけ。」


「ライトが、ひどいこと言ったのは事実じゃんか!」


「違うよ。僕は事実を述べただけ。
離れていった彼のことも同じ。ユリが勝手に傷ついているだけだよ。」


「そんなこと言ったって、今まであったものを失ったら悲しいでしょう?」


「それそれ!その考え方が苦しむ原因だと思う!」


「その考え方って?」


「自分のモノっていう考え方。モノがあると思うから、
所有欲が出てきて争いや悲しみが起きてしまうんじゃないかな?」


「でも実際に、彼は私の傍に存在していたよ!」


「う~ん。じゃあ、別の言い方をするね。
ある所に、株で大儲けして一億円の財産を作った人がいました。
でも、折からの不況で株が暴落し、10分の1の一千万円になってしまいました。」


「それは悲しいねぇ…。」


「そう。ショックを受けたその人は自殺してしまったのです。」


「え~!何も死ぬことはないよ!
まだ一千万円も残っているんだから!」


「そうだよね、まだ一千万円も残っているんだもんね。
でもその人は、一億円を持っていると思っていた。
一千万円も無いひとからしたら、それでも幸せなんだけど…。
あるものが無くなったと思うから、悲しくなってしまうんだよね。」


「あ、ライトが言いたいことわかった。
遠回しに言いくるめようとしてるでしょ?」


「言いくるめようとなんてしてないよ!
さっきも言ったけど、僕は事実を述べているだけ!」


「ふ~ん。」


「さっきユリが死にたいって言ってたよね?
死ぬっていうのも、生まれたと思うから死ぬと思うんだよ?」


「ちょっと待って!それ全然意味がわかんない!」


「同じだよ。あると思うから無くなっていくっていうこと。
だって、生まれる前はどこにいた?
何も無いところから出てきたわけでしょう?」


「生まれる前は天国にいたんだよ!」


「そういう考え方もあるよね。
じゃあ、僕の考え方も聴いてくれる?」


「いいよ。話してくれても。」


「シェイクスピアがこんな言葉を言ったのを知ってる?
『すべてこの世は舞台、男も女もすべて役者に過ぎない。』って。」


「聴いたことあるような気がする。」


「ユリが映画俳優になって、映画に出演したとするよね?
その映画の中で、ユリが事故にあって亡くなりました。
友人はみんな悲しんでいます。
でも、本物のユリは映画を観て、良い演技だなって思ってる。」


「うんうん。」


「亡くなったのは、スクリーンに映ったユリであって、
ユリが実際に亡くなったわけじゃないよね?」


「そりゃそうだよ。」


「スクリーンに映っているから、亡くなったように見えるだけであって、
実際にユリという存在が無くなるわけじゃないよね?」


「なんとなく言いたいことはわかるけど、
それは映画の話しであって、現実には生も死もあるじゃんか!」


「じゃあ、ちょっと視点を変えていい?」


「いいよ。」


「猿にらっきょうを与えると、無くなるまで皮を剥き続けるって知ってる?」


「そうなの?それは知らなかった。」


「それを見るのが面白くて、人間は猿にらっきょうを与えるんだけどね。
その猿の前に鏡を持って行くと、猿はビックリしてらっきょうを隠した後、
鏡の猿に飛び掛かっていくんだよね。」


「面白いね~!」


「散々、攻撃した後、おかしいなぁ…と鏡の裏に回ってみて初めて、
猿は自分が実体のないものに飛び掛かっていっていたことに気付くんだよね。」


「猿って賢いようで、そうじゃないんだね!」


「僕はそうは思わないんだ。
だって、猿にはそう見えたんだもの。仕方ないよ。」


「そうかなぁ?」


「人間も同じじゃないのかな?
本当はモノも生も死も無いのに、五感で感じるからあるように思っているだけ。
猿が鏡の中の自分が本物だと思ったように…。
映画のスクリーンは本物じゃないとわかるけど、
今生きてる世界のことは、実は仮の世だということがわかっていない。」


「うっ…。」


「人間は愚かな猿を見たくてらっきょうを与えていたけれど、
本当は、自分が賢いと思っている愚かな人間に、
神がらっきょうを与えているとしたら…?」


「どっちが愚かかわからないね…。」


「生と死があるって思うということは、
生まれてすぐ、80年の死刑判決を受けるようなものだよね。」


「そうかもしれない…。」


「死にたくないって思っていても、人は絶対に死ぬんだよね。
でもね、元々生まれていないんだから、死ぬこともないんだよ。」


「誰でも死ぬけど、誰も死なないっていうこと?
それって矛盾してない?」


「矛盾してないよ。どっちも真実だもの。
無から有は生じない。
みんな何も無いところから出てきたんだから、
本当は、最初から生まれてきていないんだよ。」


「う~ん…。なんとなく意味はわかったけど、まだ実感が湧かないな。」


「どっちに考えたっていいんだよ。
でも、生死やモノがあると考えるのは、
自らを物質の世界に押し込めて自由を無くし、
死刑囚として苦しんで生きていくだけだと思うんだ。」


「そっか、わかったよライト!
確かに私は自分で自分を苦しめていたのかもしれないね…。」


「ちょっと難しい話だったかもしれないけど…。
ユリは好きな人を幸せにしたいでしょう?」


「うん、そりゃあそうだよ!」


「そのためには自分が幸せじゃないと、人を幸せにはできないよね?
自分に余裕が無いと、人を憎んだり羨んだりしてしまうものじゃない?」


「そういうこと、今でもあるかも…。」


「僕は、ユリに幸せになってもらいたいんだ。
ユリの願いを叶えてあげられるのは、僕が幸せでいられるからなんだよね。」


「そっかぁ…。ライトは強いんだなぁ…。
ありがとう、ライト。」


「ううん、ユリが幸せになったら僕も幸せだから。」


「じゃあ、私の幸せのために、何か美味しいケーキでも出してくれない?」


「えぇ!もうそんな話!?」


「切り替えが早いのも、私の良いところだから♪」


「わかったよ~。確かにそれもユリの良いところだよね。はい。」


ライトがチカチカと点滅したかと思うと…。

ユリ好みのケーキが、ユリの前に現れました。


「ライトありがと~!いただきま~す!」


また彼にフラれて落ち込んでいたユリですが…。

ライトの言葉を聴いて、再び元気を取り戻しました。


ユリは幸せを掴むことができるのでしょうか?

次回をお楽しみに♪


<第四話へ続く>



【魔法のライト第二章第一話】


【魔法のライト第二章第二話】



★魔法のライトの前作は、以下をご参照下さい。


<第一話>
http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-10733739344.html


<第二話>
http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-10735305409.html


<第三話>
http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-10737884131.html


<第四話>
http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-10739395395.html


<最終話>
http://ameblo.jp/mikatakakumei/entry-10741372640.html



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