久しぶりのブログである。実は腰がイマイチで、
長時間座っているのが、怖かったというのもありまして・・・。
ま、もうダイジョブそう。

ドラム関係で、スネアの「鳴り」について長々ツイートしていて、
それは、多分今のドラマーは、倍音だらけのスネアしか体験のない人が多く、
スネアが鳴っているかどうか判断出来ない状態でしか叩いた事がないのだろう。
というものだった。
これは楽器の鳴りについてだったのだが、
実は、これが今までここで書いてきた僕の数年に渡る
非常に深刻な謎にも関係していそうなので、
長くなるので、ブログにする事にした。

音の聞こえ方には「マスキング」という現象がある。
大きな音があると、それ以下の音は聴こえない。
というか存在がかき消されてしまう。
倍音の多いスネアで、中域、低域、スナッピの「ジャ!」
などが、出ているか判断出来ない。というのもこの現象による。
倍音の中の「キン!」という高い成分はヌケが良すぎて、
聴覚上、他の音をかき消してしまうのである。

で、これはスネアのみならず、
リハスタなどにおけるドラマーからの他の楽器の聞こえ方にも
大きく関係してくる。
股間のスネアで大きく鳴っている、この「キン!」は、
実は、他のベースやギターのアタックの音の帯域を
マスキングしてしまうのである。
ドラマーに聴こえるのは、アタックの帯域以下のみの
ムーンとかジャーのみになってしまう。

しかし、例えばベースがどういうリズムで弾いているか、
が判断できるためには、音の頭、すなわちアタックが聴き取れる事は
必須なのである。もちろんギターも。
カウベルがどんなリズムか正確に把握するのに、
「コ!」というアタック以降の「ウン」しか聴こえなかったら、
合わせようがない。
気持ちよくリズムで絡み合おうにも、
最も重要な部分が、聞こえないのだから、
やりようがないのである。

しかし聴こえない。

ここはスネアの「鳴り」のみならず、
近年のバンドのバラバラっぷりにもやはり関係している気がする。
ドラマーが、気付きようがないので、
いくら一体感の重要性を説明しても無理な訳である。
「気持ちの問題」でもない。
リズムのカナメのドラマーに周囲の出しているリズムが
実は聴こえていない。
細部のコンビネーションがいつまでたってもバラける。
周囲からすると「おいおい・・・。」という事をドラムが平気でやる。
文句を言われるが、ドラマーには理解出来ない。
だって、合ってるかどうかが聴こえないんだからしょうがない。
こういう事が続くと、誰しも萎えて来て、どうでも良くなってくる。
やがて諦めムードが満載になって・・・。

この辺りは実際ドラマーの体験がないと、まず分からない。
僕自身もこの手の失敗は当然あったのだが、
デビューしたバンドのリハ中に、この現象に気付いて以降、
今でも、この高い成分のコントロールは必ずする。
そういう手法の存在自体は、学生の頃スティーブ・ガッドが
ミュートを流行らせたので知っていたし、
そういう音も好きだった。

他の楽器のニュアンスが、クリヤに聞こえ、
それが、自分が演奏しているドラムと絡んでいるかどうかも
普通に分かる。分かるから合わせられるし、
ノリに関する相談もできる。
この事によって、リズムの絡み合いから生まれる一体感と、
そこから出てくる高揚を自然と演奏する事が出来る。

僕自身は、そうやって来たし、いわば自然とスネアは鳴らせるようになり、
周囲とも合わせられるようにもなった。(ハシるけどね・・・。)
ブームが終わっても生き残っているバンドのドラマーのスネアの音には、
やはりそういう事を考えたフシが必ず見受けられる。
派手に聴こえるが、実は中域の倍音だ。とかね。

ツイッターにも書いた事だが、
パンクブームのハシリの頃からずっとライブハウスで飲んでいたので、
その頃のドラマーともずいぶん話したし、ライブも観た。
まあ、一様に「ミュートなんかしないっす!スネアはカンカンっす!」
しかし、今考えると、「第一世代」は、まだその前の時代の事も知った上で、
分かってやっていたのである。鳴らせた上でのカンカン。
ゆえにまだ一線に残っているバンド、ドラマーも多い。

で、それがブームになって、やがてそれに憧れた世代がバンドで出てくるようになる。
それが数年前から現在だろうが、そういった世代のドラマーには、
最初っから「ノーミュート、カンカン」以外に体験が無いのではないか?
というのは、僕には無理も無い事に思える。
ギターなら最初からディストーション!(ま、これはもっと昔から問題だけどね。)

と、考えると、ここ数年になって急にドラマーがスネアを鳴らせなくなった、
バンドがやたらバラバラで、ドラマーがそれに気付きもしない事が出て来た。
という事が、理解出来るような気がする。
重要な音の聴こえない音場でしか演奏した事がないのである。
そういう環境しか知らないから、そういうものだと思っている。
精神論言ったって無理。説明しても無理。
若者特有の心理を探っても理解不能。
そもそもみんなマジメで、上手くなりたいと本人は思っている。
ま、誤魔化してる!って訳でもないんだよな。

なので、まあ、若い人には体験してみる事をお勧めしますわ。
ま、具体的には、スタジオでリングミュート置いてあったら借りて、
スネアにちょっと乗っけてみる。とか。
「オナニーしたいんでティッシュ一枚下さい、
あ、あとガムテ引っぺがしオナニーもしたいんで、
ガムテ10センチ下さい。」
と言って、ティッシュとガムテもらって、ティッシュ小さくたたんで、
ガムテで、スネアの上のほうに貼り付けてね。

ま、ショボく感じると思うけどね。
「ロックじゃねえ・・・。」と思うと思うけどね。
ま、やってみなはれ。
他の楽器が何やってるか、すんごいよく聴こえるから。
スネアが鳴ってない時もちゃんと分かるからね。
ああ、キックも聴こえるようになる。

ま、ギターでもピッキングのニュアンスが分かる程度に
歪みを少し減らしてみる、たまにゃ全員スッピンでジャムってみる。
そういう状態でやってみて、出来れば録音してみると良いね。
個々の楽器は、しょぼく感じるけど、全体としては意外とちゃんと録れてたりする。

スッピンになると何も出来てないのに気付いて落ち込むかもしれないけど、
気付かないままでずっと居るより良いでしょ。
ヘタが露骨に見えるって言うのは、上手くなってるのも見えるしね。
モチベーションも湧く。

やってみて、ノーミュートに戻ってももちろん良い。
前より全然良くなると思う。
ちょこっとガムテ貼るだけで、上記のデメリットが解消する事もあるし。
がっつりミュートした音が気に入ったら、それも良い。
ロックに答なんかないんだからね。

ま、ドラマー、ドラムテックの我田引水なのかもしれないが、
経験と、起きている事を考え合わせると、
スネアの倍音の高い成分のマスキング現象は、
意外と多くの問題を引き起こしている。と、思えるし、
説明したうえで、実際やってみてもらったドラマーは、
急速にいろんな問題が改善されつつある。
本人にプレッシャーを与える必要も無い。
分かる環境に置いてあげれば、分かる人なら勝手に伸びる。

個人的にも、ずっと悩みのタネだった事の理由の一端が
数年がかりでやっと解明出来た気がする。
いや、ドラムテックの仕事上も、ドラマーがスネアを鳴らせない、
というのは当然大問題でねえ・・・。

そもそも楽しくない。
本来は、ちゃんと音を出せるドラマーと
「こんなのどう?かっこよくね?へっへっへ。」
「おお、良いっすねえ、こりゃ世界初だ。へっへっへ。」
と、悪だくみを楽しみたいのである。

ま、やってみて。