吉川美津子のブログ 葬儀・お墓・終活について -2ページ目

アマゾンの「お坊さん便」ヒートアップ

昨年12月にサービス開始して以来、コンスタントに話題に上っている
アマゾンの「お坊さん便」(みんれび運営)

このサービスに関して、「貴方はどう思うか」と多くのメディアから意見を求められました。
一段落したと思っていた矢先、今月4日「全日本仏教会」が
「宗教行為を定額商品として販売することに疑問を感じる」
と販売中止を求める文書をアマゾンに提出しています。

「僧侶を手配します」というサービスは、今回始まったばかりのサービスではなく、
15年ほど前から存在していました。
ですから、正直この業界に従事している人にとっては、特に目新しさは感じていないのではないでしょうか。

考えてみれば、2009年にイオンが葬儀のサービスを開始した時の状況に似ていますね。
「明瞭会計」をうたったイオンは各メディアに取り上げられ、業界初のような形で紹介されることも少なくなかったように記憶しています。

しかし、90年代半ばから葬儀業界では明瞭会計を含めて、積極的に情報開示する業者が増え、不透明感を払しょくしようと努力してきた会社は数多くあります。
ところがどんなに業界内で叫んだところで、世間にはなかなか理解されず、葬儀業界といえば、「ぼったくり」「だまされた」などの言葉が常に踊っていたような気がします。

そういう意味ではイオンの影響力はすごいですね。


「お坊さん便」も「みんれび」のサービスに留まっていたら、ここまで注目されることはなかったでしょう。
アマゾンというプラットフォームに乗ったことで、多くの人の目に触れることになり、世間が、仏教会が動いたのだと思います。



そもそも15年ほど前からあった「僧侶派遣会社」ですが、当時の実情はそれこそ実態が見えない会社が多かったような気がします(すべてではありません)。
例えば
「私はすべての宗派のお経を覚えたので、何宗の依頼でも可」と自称僧侶を名乗る怪しい人が登録していたり、
また、派遣会社が手数料を30~70%も取っていたり・・・・・・。
かつてのそういった怪しい会社は、現在ではほとんど姿を消しています。


「宗教行為を定額商品として販売することに疑問を感じる」
という意見は的を得ています。
私おお布施は労働に対する対価ではないし、時給でいくらと換算できるものではないと思っています。
ただ、アマゾンを支持している人が多いのも事実。
むやみに反発するのではなく、どう共存していくべきか考えていくべき時が来たのかなと感じています。


実際、「お布施」って高いですよね。
通夜、葬儀・告別式で数十万って、普通に生活している人にとってはかなり厳しいと思うのです。
少なくとも、子どもの教育費やローン等で日々の生活が精一杯の我が家では、すぐに準備できる額ではありません。
業界20年、足を突っ込んでいる私でさえそう思うのです。

一般の人の多くは、お布施そのものを拒否しているのではありません。
「お気持ち」という名目の分厚い札束に拒否反応があるのです。


さて冒頭の質問
「あなたはこのサービスに関してどう思うか」
そう訪ねられたら、大抵はこう答えています。
「議論できるようになったことは進歩だと思う」
と。
良いとか悪いとかではなく、そもそもお布施とは何か、葬儀とは何か、法要とは何か・・・・・・を問い、死者の弔いや先祖供養などを考えるきっかけとなれば、次なる課題に向けて一歩前進できたのではないかと思うのです。



見守り・看取りの現場より

先日、重度訪問介護の現場で看取りを行いました。

お昼寝中、ベッドの側に付き添っている間は、少し呼吸が苦しそうな様子ではあったものの、大変落ち着いた表情で休んでいらっしゃいました。

お休みになってからちょうど1時間、いつものように起こそうと声をかけましたが呼吸のみで意識がなく、最期は駆けつけた医師、看護士、家族に囲まれて穏やかに看取られました。

毎週お会いする度に、状態が悪くなっていく姿を見て、私に何ができるのだろうかと自問自答していました。

文字盤を通しての会話に私が慣れてきたところで、これからもっとコミュニケーションをとっていきたいと考えていただけに大変残念です。

午前中の医師の往診時、数値は安定していましたが「苦しい」と目で訴えていました。
あの時に限界を感じていらっしゃったのかもしれません。

「お風呂に入ってもいい?」
と医師に聞いていたのが忘れらえません。


現在、自宅で亡くなる方や約20万人。病院で亡くなる方が90万人、介護施設等で亡くなる方が
4万人ほどと言われています。
今後、死亡者数が増え続ける2040年までの間、自宅で亡くなる方の数は今以上に増えていくことが予想されます。

「自宅で看取る」

簡単なようで、現代社会ではそう簡単にできるものでもありません。
医療、看護、介護、地域、家族、それぞれの連携があってはじめて成り立つのだと身をもって感じました。


残念ながら、現在は「福祉・介護」と「葬送・供養」は死をもって制度も業界も分断されています。

これらを線で、そして面で結び付くことができるよう橋渡しができると良いのですが・・・・。
それができない今の制度の中で、死を目の前にした家族に何もできない自分が腹立たしく、大きなジレンマを抱えました。

私は葬儀の現場で働いていましたから、死から始まる一連のお手伝いをすることは物理的には可能です。

しかしその日は介護従事者として現場に入っていまるので、「死」をもって私の役割は終了となり、目の前にいる家族をサポートすることは何もできなくなるのです。

ここから先は、数十分後に来る葬祭業者にバトンタッチ。
専門分野なのにお役に立てない、というもどかしさ・・・・・。

この隙間を埋める方法、きっと何かあるはずです。




虐待の発生要因に「職員のストレスや感情のコントロール」20.4%

ずいぶんと久しぶりのブログ更新となりました。

次回出版の本の執筆に追われていることや、合間を見て重度訪問介護の現場に入っているため、なかなかブログ画面を開くまでに至らない日々を送っています。

昨今のニュースより、

入所者3人が相次いで転落死した川崎市の有料老人ホームの痛ましい事件が、毎日のように報道されています。
現在容疑者の取り調べ中であり、憶測での発言はここでは控えますが、本日の東京新聞で気になる記事をみかけたのでご紹介します。

入所者三人が相次いで転落死する事件が起きた川崎市の有料老人ホーム「〇〇〇〇」では、経験の浅い介護職員が多くを占めている。殺人容疑で逮捕 された元職員〇〇容疑者も事件当時、介護経験約半年の「新人」。仕事でストレスを抱えていたとの趣旨の供述をしており、介護現場での人材育成や職員の 支援体制が、課題として浮かび上がる。

~省略~

こうした仕事に不慣れな職員が多い状況は、介護の現場に共通する。公益財団法人「介護労働安定センター」(東京都荒川区)の一四年度の介護労働実態調査によると、介護職員の勤続年数は五年未満が六割以上を占め、平均勤続年数は四・六年だった。

 また、厚生労働省の調査では、介護施設などでの虐待の発生要因のトップは「教育・知識・介護技術などの不足」で、二番目が「職員のストレスや感情コントロールの問題」だった。


「教育・知識・介護技術などの不足」の解消には、それなりの教育水準を上げれば良いということになりますが、現在行われている介護職員初任者研修でも130時間の研修が課せられているので、これ以上導入時のハードルを上げるのは難しいかと思います。

ならば、定期的な研修等で、知識・技術レベルを上げていくことが必要となるでしょうが、まだまだ発展途上で、各事業所ごとにばらつきがみられます。

「職員のストレスや感情のコントロールの問題」は、どう解決していったら良いでしょうか。

私も重度訪問介護の現場で、死から始まる葬送の現場とは違った意味で感情のコントロールが難しいと感じています。

身体をほんの少し触るだけで「痛い!」と不機嫌に訴える人もいます。
文字盤を通してでしか会話が成立せず、イライラを吐き出す人もいます。
死に向かうしかない自分に苛立ち、激しく感情をぶつける人もいます。

そういった人達にどう寄り添っていくべきなのか、正直まったくわかりません。

医療・福祉の教科書では、よく「共感的理解」という言葉が使われますが、まさに「共感」しようと思っていては、自分自身が押しつぶされてしまうでしょう。

川崎の事件を起こした職員をかばうつもりは全くありませんが、同じようなストレスを抱えた介護職員はたくさんいます。
いつどこで同類の事件が発生してもおかしくはない状況だと思います。

臨床宗教士、医療・介護・福祉と供養の橋渡しになるか??

「臨床宗教師」という言葉を知っていますか?
平成24年に東北大が全国で初めて養成講座を創設し、平成26年度からは龍谷大(京都)でもはじまった講座です。

臨床宗教師とは、苦悩あ悲嘆をかかえる被災者やがん患者らの心のケアにあたる宗教者のこと。相手の価値観を尊重し、布教や宗教勧誘は一切行いません。宗教は仏教だけではなく、キリスト教、神道なども含めて考えていく内容となっているそう。

2016年2月3日の産経新聞に、臨床宗教師研修の様子が掲載されていました。

死生観と向き合う

昨年6月3日、宮城県南三陸町。仮説住宅の敷地にある集会所で、龍谷大学大学院で臨床宗教師研修を受講している学生が、被災者らと「お茶っこ」を開いた。ご近所同士が集まり、お茶を飲みながら世間話をする東北地方の習慣にヒントを得た交流会だ。

ケーキを食べながら、打ち解けた雰囲気で談笑するうちに、参加した被災者は「心の痛み」をぽつぽつ語りはじめた。70代の女性は、夫が津波にのまれて行方不明のままだと打ち明け、なかなか出かける気になれず、「運転免許の更新にも行けない」と話した。

~一部省略~

受講生らは、津波で町職員ら43人が犠牲になった南三陸町防災対策庁舎で追悼法要も営み、同僚を亡くした元職員の女性から当時の体験談を聞いた。

~一部省略~

龍谷大がモデルとした東北大の臨床宗教師研修では、終了したのべ126人のうち約3分の1が、主に医療・福祉の現場で活動している。

「医療・福祉の分野には、医師や看護師などスタッフに対するケアのニーズもある」と指摘。同大学以外にも臨床宗教師の養成をはじめた大学があることから、今後は各地の修了者同士の連携や、フォローアップ研修の充実を図るとしている。

「医療・介護・福祉」と、「葬送・供養」は、業界も制度も全く異なり、一部を除いてまったく連携されていません。
実際、介護従事者として現場に入っていると、制度の谷間というか、網目からこぼれ落ちている部分がよく見えてきます。

ある日のこと、介護の現場で利用者の方がお昼寝に入る際、こう言われたことがあります。
「寝ている最中でも、20~30分に一回話しかけてください・・・」
そのまま意識がなくなってしまうかもしれない恐怖を感じていたのでしょう。
ベッドへの伏臥介助をしながら、その恐怖感が伝わってきました。

そういった「見守り」シーンに臨床宗教師のような立場の方がいたら、どんなに安心するでしょう。
制度もなく、ボランティアといっても限界がある中で、個々の臨床宗教師がどういう活動をしていくのか、今後の動向が注目されます。

<メディア情報>
2/ 婦人公論別冊「家族と私の終活」発売
2/26 朝日放送「キャスト」墓じまい特集コメント
2/ ダイヤモンドオンライン「墓じまい」コメント

坂東三津五郎さんの本葬

2月21日に59歳の若さで亡くなった歌舞伎俳優、坂東三津五郎さんの本葬が、25日に東京東京港区の青山葬儀所で行われました。


その取材レポートに関しては、別の媒体で掲載予定です。


ここでは備忘録として取材メモ、および雑感を書いておきたいと思います。

本葬に先立って、23日には通夜が、24日には家族を中心とした葬儀が行われその日のうちに荼毘にふされています。



お勤めされた寺院は「日蓮宗 正學山 妙源寺」
※菩提寺なのかは不明です。守田家、歴代の坂東三津五郎の墓は、多磨霊園や、月窓院などにあるそう。

法号は「香藝院爽進日壽居士」
意味は
院号「香藝院」・・・客席にまでかもしだす品のいい香り漂う芸。
道号「爽進」・・・人として爽やか、三津五郎さんの俳名「爽壽」から。

遺影に使用された写真は、紋付袴で平成21年に撮影。歌舞伎公演で使用する宣材写真だそうです。


さて、現場の様子ですが、25日の本葬は午後3時スタート。葬儀社はT典礼。
いやぁ、驚きました。葬儀社スタッフの少なさには。。
青山葬儀所で、しかも参列者5000名規模となると、相当スタッフを配置していないといけないと思うのですが、とにかく少ない!
施主側の意向もあるのでしょうが、大規模葬に慣れているT典礼ですから相当自信があるか、葬儀委員の配置と役割分担をしっかり決めているのかどちらかだと思いました(最初は)。



しかし結果的には、葬儀社スタッフの動きは待合所エリア他、少なくとも外回りは到底大規模葬といえる感じではなかったのが残念です。

(式場内の様子については、モニターもなかったのでわかりません)


私が待機していた報道エリアから見たところ、駐車エリアに配置された外注業者は2名程度といったところでしょうか。

限られた駐車スペースに次々とやってくる車両をどう誘導していくのか心配していましたが、ここに関していえば予想をくつがえし、大和屋関係者が慣れた様子で車両をテキパキとさばいています。これには驚きました。


ところが、その他の外回りに関しては・・・・・ですね。


待合所に配置されたスタッフは3~4名程?その他ポツポツと3~4名程度配置。
あとは故人の関係者が「葬儀委員」として案内係などをしています。
ところが和装姿のご婦人たちが、片手にバッグを持ちながら誘導している姿を見ると、とりあえず人を集めたといった感じがしてなりません。


そうしなければいけない状況なら、葬儀社がもう少し適切な指示が出せるのではないかと思いました


あげくのはてに、そういった和服のご婦人たちから
「流れを作らないとあぶないでしょ」
と葬儀社スタッフが怒られる始末。。


こういった大規模葬では、派遣スタッフもよくいますので、あまり大規模葬に慣れていない派遣の方かとも思いましたが、派遣の制服ではなかったですし、T典礼の名札をつけていましたので、おそらくT典礼のスタッフかと。。


それから祭壇のデザイン、決して悪いわけではないのですが、もう少し気の利いたものにならなかったのでしょうか?


白を基調に、若干ブルー系が入ったシンプルな洋花の祭壇。
使用花材は、トルコキキョウ、マム系、ストック、かすみ草など約4100本。


当然費用がかかるので、費用感にあった祭壇を作ったのでしょうが、後日談
「三津五郎さんは生け花を好み、特に和花が好きでした。楽屋の床の間を自身の生け花で飾っていました。ブルーの花が好きだったとのこと」
というエピソードを聞くと、もう少し三津五郎さんらしい祭壇を提案できたのでは、と思わずにはいられないのです。


ちなみに生花業者は、T典礼関連会社のTハ○さん。
T典礼は大型葬といえば、5本の指に入る施行数を誇る業者なのですから、今後はぜひ業界を牽引する意気込みでお願いします!



坂東三津五郎本葬青山葬儀所



<出演・掲載情報>

2/  婦人公論

2/  冠婚葬祭ch(損保ジャパン日本興亜株式会社)

2/  SUUMO介護
2/26 TBSラジオ

3/  サイゾー
3/13 日本経済新聞 お墓特集

3/13 終活読本「ソナエ」
3/20 フジテレビ 新報道2001

4/1  仏事