シュガー・ソルジャー 4 (りぼんマスコットコミックス)/集英社
¥420
Amazon.co.jp



「自分が誰かの力になるなんて
考えたこともなかった
やっと見えてきたものから
目を逸らしたりしない
聞こえてきた声に耳を塞いだりしない
強くなるんだ」


シュガーソルジャー4巻
酒井まゆ・りぼんマスコットコミックス
(りぼん掲載)


★あらすじ★
如月麻琴、高校一年生。姉の莉華が読者モデルなため、コンプレックスを持つ女の子。
いつも涙目でネガティブなめんどくさい系女子だったが姉の存在関係なく接してくれる入谷を好きになった。
麻琴は入谷に告白するが、「オレの優しさは嘘なんだよ」と言われ断られる。麻琴はまたがんばろうと一歩踏み出すが、入谷がある事件に巻き込まれ‥?


りぼんの職人肌、ターニングポイントの4巻。


☆☆☆

ファンタジー漫画「MOMO」の後酒井先生が発表したのはネガティブ主人公のごくごくオーソドックスな恋愛漫画。
麻琴はネガティブという設定ですが、りぼん読者の気持ちに近い普通の女の子だと思います。



゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。☆
ここからは単行本を読んだ人だけどうぞ。
漫画をお金で買うことが作者の力になります。
゜・:,。゜・:,。★゜・:,。゜・:,。☆




いや、なんか申し訳ないなぁと思いました。主人公の麻琴があまりにネガティブで考えすぎるため「作者の分身を今更描いてるのか‥」と最初がっかりしたのを後悔しました。


今回ようやく入谷の過去が具体的に判明します。前々からなんとなくネグレクトされてたんだろうなと思いましたが‥入谷にとってはその後の幸せな生活もまとめてトラウマなんですね。

嫌われるのが怖いから、自分を投げ出して誰かを好きになることができない。そりゃあそうなのです。好きの感情が自分から出ている時って、相手に対するちょっとした安心感がベースになってる。
しかしその「何をしても嫌われない」という自信をどうやって持つか分からなくて苦しんでいる人は結構いると思います。



ただ、そんな入谷に対し麻琴は自分を投げ出せると知ります。いつもビクビクオドオド、コンプレックスを持つ麻琴ですが、とある事件で「私でも力になれる」と気づきます。

自分にできることがある。
自信は、人を強くします。


そこからの麻琴がガラリと変化していくのを見て、なるほどなぁと。酒井先生はこれがやりたくて主人公にマイナスからのスタートを切らせたんですね。
ここまでを残念なヒロインで引っ張るのはかなり危険だと思います。麻琴がなにもしないまま打ち切りになる可能性は大いにあったわけです。

なんとなくひよ恋に似た感じになってきましたが、今までの話を計算しているだけに、さすがベテランだと思いました。りぼんで安定して物語を提供できてるのは、ベテランでは酒井さんぐらいでしょう。



ただし。

最近ちゃおの「キミは宙のすべて」を読んで目からウロコが落ちた自分としては、思うところがあります。

入谷のネグレクトとトラウマって、漫画的には「いかにも」なんです。
漫画における家族問題は離婚、DV、虐待、貧困、ひきこもり、階級差別などまあイロイロと派手です。親は冷たく描かれますし、子供は反抗している。そこにドラマが生まれるので使わない手はないんですが。

「キミソラ」は離婚家族がベースだけど親は優しいし子供も自分なりに受け止めて親を慕っている。互いが思いあうからこそ生まれる辛さがちゃおなりに描かれているんです。

そこでりぼんを振り返ると「親と子の対立」しか見えて来ない。
悲劇は憎しみだけで生まれるわけじゃない。今は一分単位で離婚が起こっているというけど、家族には様々なカタチがあるはずなのです。

あとカレカノ有馬とか見てると「早くカウンセリング受けろ」と突っ込みたくなるわけですが、入谷も同じというか‥あれだけしっかりした大人に囲まれてるわりに救われていない。


しかしもっと昔を遡れば「花ぶらんこゆれて」みたいに継母がハーフの娘をいじめたり、召し使いのようにこき使ったり、主人公が拾われた子だったり愛し合う二人がいきなり兄妹バレになって心中したりしたので今は家族設定が小さくリアルになってるとは思いますけども。

だからこれからは「対立でない親子関係」が現れる時代になるかもしれません。
対立しても無理だとわかればさっさとあきらめ、信頼できる大人を探し親は適当にあしらうぐらいの主人公がいてもいいと思うのです。

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