カテメン 1 (マーガレットコミックス)/集英社
¥420
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「目線が逸れていたって
背を向けていたって
こうして今隣にいたって
アタシは『心』を楓ちゃんの方に向けてるよ」


カテメン1巻
竹内文香・マーガレットコミックス
(マーガレット掲載)


☆あらすじ☆
マスクをしないと友達と話せない、5人グループだけど、ペアで何かするといつも私が外される…
いじめではない、でも心がキリキリと痛い、毎日誰かに「助けて」と叫んでいる女子高生たち。

ある「家庭教師」が町の噂になっていた。彼女は特別な条件の生徒だけを選んで家庭教師をするという。
「家庭メンター」善導は一人で耐える子供たちのそばに現れる…!

「友達ごっこ」で友情と人間関係を深く掘り下げてきたマーガレットの実力派作家が送る、心の処方箋!


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


「友達ごっこ」で好評を博したものの、弓道漫画「凛!」で打ち切りになってしまいこの先どうなってしまうのかなあ…と思っていた竹内先生ですが、またまた友情関係モノを引っ提げて戻ってきてくれました!本当にありがたいし、先生にはこの作風があっていると思います。
現在某種村有菜先生がやってきてカオスな状態になってるマーガレットですが、こういう漫画があるという事を知ってもらいたい。というか、種村さんは「友達ごっこ」を絶賛していたのです。


さて、待望の新作。「家庭メンター」善導(下の名前は不明)を狂言回しに、学校生活に悩む生徒が立ち直っていく姿を三回の短編でまとめていくシリーズのようです。マーガレットでは不定期連載のようで、この先の刊行はちょっと遅そうです。

というか、今ネットで検索したんですが「メンター」という職業…というか、そういう役割を担う存在がいるんですね。
カウンセラーとは違い専門的な資格を持っていないのですが、その分悩んでいる人と「一緒に悩もう」というスタンスで助言をするようです。資格が必要ないぶん、報酬はありません。
「一緒に悩む」というのはわりと宗教家もやることなんですが、宗教に抵抗がある人にメンターはうってつけかもしれません。

この漫画ではそのメンターに「家庭教師」の役割を合体させているようです。
目つきの鋭い、なんとなく怪しげな女性・善導。偏食でつかみどころがなく経歴は一切不明ですが悩む生徒へのアドバイス・アプローチは完璧。一方的に説教などはせず、子供が自分から解決法を見つけるまでじっくり見守っています。


私は二話目の「補助席」が好きですね。
奇数のグループにいると、必ずぶち当たるのが「ペアを組んでの活動」。
遊園地の乗り物は必ず二人掛けだし、レストランの席もほとんどが二対二。
主人公の舞は五人のグループでなんとなくあぶれてしまい、自分の立場に苦しんでいます。
舞の友達たちは決して舞をハブにしてるとかいじめているわけではありません。
しかし舞の心は寂しさと不安でいっぱい。

「友達ごっこ」もそうですが、竹内先生はこのありふれたギリギリの学校生活を描くのが本当にうまいです。
学生は漫画のように毎日恋をしているわけじゃない。かといってドラマや映画のようにいじめや暴力を目にしているわけでもない。平凡に毎日を送ってはいるのですが、いつもいつもちょっとしたささくれに引っかかって、「私どうしたらいいんだろうなあ」と考え込んだりしているのです。

そして舞が客観的に自分の立場に気付き、一回間違いを起こしつつも正解にたどり着くまでが秀逸だなと思いました。
思春期は誰でも結構主観で物事を見てしまうのですが、現実がそうでないと気づくと世界はあっけなく、友情も「なあんだ」と思えるものになっていく…


「友達ごっこ」とほとんど同じジャンルの漫画と言えますが、「カテメン」はさらに小さく地味な日常を描いています。ドラマチックなどという言葉は無縁かもしれません。
しかしドラマチックじゃないからこそ見えるものがあると思うんです。


「みんなが『恋愛』を描くなら私は『人間』を描きます」
先生のあとがきに熱意を感じました。
このマンガがどうなるかはちょっとわかりませんが、どういう結果であれ先生にはこの路線を貫いてほしいです。


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