お礼企画第1弾。
りか様からのリクエストです。
りか様、リクエストありがとうございました!!m(_ _ )m
お相手は風間となります。
甘めな話となりましたね。
後編は若干?裏描写があります。
苦手な方などお気をつけください。
キャラ崩壊などお目汚しがあるかと思われます。
それでも宜しければどうぞ。
「…いつまでそのような態度を取る気だ」
「嫌なものは嫌でございます!!」
近付いた部屋から聞こえたそのやりとりに天霧は呆れ気味に溜め息を吐いた。
先程も風間に用件があり声をかけようとしたが、
急くこともない用件であり夫婦の会話に割って入るのは気が引けたため、
その場を離れていた。
天霧は別件を済ませ、風間がいるであろう二人の部屋に戻ってくると
まだやりとりが続いていたのだ。
声の主はこの屋敷の主、西国の鬼の頭領である風間と
風間家に嫁いできて二月になるりかだった。
普段は家臣や村に住む鬼達からも羨ましがられる、とても仲睦まじい夫婦だが、
珍しく先ほどから続く言い争いをしていた。
部屋の引き戸などは開け放たれ、新緑に溢れる庭には柔らかな日差しが降り注いでいる。
時折穏やかな風が庭の木々たちを揺らし、訪れる鳥たちが美声を奏でる。
そして部屋の中では煙管を咥え、紫煙をゆったりと昇らせる風間と、
その向かいに正座し、半ば俯きながら頬を染め、着物をぐっと掴んでいるりか。
風間の表情はりかの態度が不可解だといったような表情だった。
「夫である俺と共に湯浴みせぬのか、何故そこまで強情なのかが解せん」
「…っ。わかっていただかなくて結構でございます」
りかの返事に風間は大きく紫煙を吐き出し、雁首から灰吹きに灰を落とす。
煙管をコトリと置いたかと思えば、りかの両腕を強く引き寄せた。
「きゃっ…!!」
風間の胸に飛び込むようなかたちで体勢を崩したりか。
反論しようとすれば風間の指がりかの顎を掬い、赤い瞳と視線が絡まる。
「強情なりかも悪くはないが何故そこまで嫌がる」
「…恥ずかしいからにございます」
「ほう、この口がそのようなことを申すか。毎夜のように甘い声を紡ぐこの口が。
…ここに嫁いできて二月。今更恥ずかしがることもなかろう」
「…っ。誰が聞いているかもわからないのにそのようなことを…」
風間はすっと目を細め、親指でりかの唇をなぞる。
その様が昨夜の風間を思い出し、りかの身体に火照り生み出す。
りかの表情が変わる様に風間は口元に三日月を浮かべた。
「湯着を羽織ればいいだけのことではないのか」
「何度も申し上げますが、恥ずかしいのです」
頬を染めながらも口を一文字に結ぶりかは拒否し続けた。
大きく息を吐いた風間はりかの身体を立てなおし、すっと立ち上がる。
「わかった。もうよい」
風間の言葉にりかは俯きながら小さく安堵の息を吐いた。
「…あやつに頼むか」
庭先を眺めながら呟いた風間の言葉にりかは目を見張った。
見上げた時には風間は既に歩を進め、
部屋を出て行く背中だけがりかの視界に入り消えていった。
『あやつ…?』
りかは自然と視線を畳へと落とした。
まさか風間に自分以外に共に湯浴みをするような間柄の女子がいるのかと考えが過ぎり、
段々と表情は青ざめていく。
まさか、まさか…。
でも教えてもらっていないだけで側室がいるのかもしれない。
りかは風間のあとを追うように部屋を出ると風間に用件を伝えた天霧と出会う。
「千景様はどちらに?」
「今は外に出て行きましたが、
家人にすぐに戻ってくるので湯浴みの用意をするように言っていたようですが」
「そう…ですか。あ、あの…つかぬ事をお伺いしますが」
「はい」
「千景様に…側室はいらっしゃるのでしょうか」
りかの突拍子もない言葉に天霧は無表情ながらも言葉を失った。
あれだけ毎夜風間に愛されていながらまだ…と天霧は半ば呆れたが、
いや、あの風間のことだ。何か言ったに違いない、と
目に涙を浮かべながら口を一文字に結ぶりかに同情を覚えた。
「何か風間に言われたのですね」
「…言われたわけではないのですが…」
「庭を見ながらでも一息吐かれてはどうですか。家人に茶を持って来させましょう」
「…はい」
視線を下げるりかを見下ろし、一つ息を吐いて、
近くにいた家人に茶を申し付けた。
しばらくして家人が動き出したのを感じ、
天霧は縁側に座りぼんやりと庭を眺めるりかへと歩み寄る。
柔らかな日差しの中、西国の鬼の頭領の妻であるりかは
いつもの気品を滲ませながらも物憂げなその横顔に少しばかりの色気を漂わせていた。
「…風間が帰って来たようです。何か思うことがあるならば本人に問うのが一番でしょう」
顔を上げ不安げに湯殿の方向を見るりかを天霧は優しく見つめる。
「わかりました」
腹を決めたように天霧を見上げ目を細めたりかに、同じように目を細めた天霧。
りかの後姿を見送りながら『夫婦喧嘩は犬も食わない』という言葉を思い出し、
小さく口元に笑みを浮かべ目を伏せた。
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