薄桜鬼・妄想小説【空が鳴っている】最終話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

設定についてはこちらをご覧下さい→


第1話はこちらから→

目次はこちらから→




キャラ崩壊、設定無視など、かなりのお目汚しです。


それでも宜しい方はどうぞ。




これが最終話です。

最終話の後の話を明日アップしますが。


沢山の温かいコメント、沢山のペタありがとうございました。



どうか皆様の心に何か残せますように。






















鳥羽・伏見の戦いが切って落とされた。


かなめは近藤から戦が始まったことを聞かされていた。





松本の診療所に怪我を負った山崎がやってきたと遣いがきて、
所用で実家にいたかなめは急いで診療所に向かう。



廊下にいた松本の腕を掴んで問いかける。

「先生!烝さんはっ!」

「落ち着きなさい。この部屋だ…」


「先生、容態は…」

「背中に深い傷を受けている。意識はあるが…私もやれるところまでは手を尽くした」

「…」



襖を開けるかなめ。
横たわる山崎に駆け寄る。

「烝さん、烝さん!」


うっすらと目を開ける山崎。


「かなめか…会えて良かった。こんな姿ですまない…。会いたかった、かなめ」

「私もお会いしたかったです。」

山崎の手をとるかなめ。力なく握り返す山崎。

かなめの目が潤みだす。


「泣かないでくれ。」

「…お会い出来て嬉しいんです」

「俺も嬉しい…」

苦しそうながらもかなめに優しい目を向ける。


「どこか痛みますか?苦しいですか?」

「今は大丈夫だ。かなめに会えたからか、気も休まってきた…」



「…烝さん。お会いして直接お伝えしたいことがございました」

意を決したような目。


「何か…あったのか…」


「私には…かなめには…貴方の…烝さんのややこがおります」

「…!!それは誠か?」

山崎が息を飲む。


「はい、違いありません。この間、烝さんが京に戻られた後にきちんとわかったんです」

涙を流しながら優しく笑うかなめ。


「…そうか、そうか。」

かなめを自分の胸まで引き寄せ抱き締める。

かなめの耳にはトクトクと山崎の心(しん)の音が聞こえた。


「よくやってくれた、かなめ。」

かなめの顔が見たいのであろう、山崎は腕から開放する。

「はい…。ありがとうございます…」

「はは…。こんな様だ…。嬉しいやら、情けないやらだな…」
眉間に皺を寄せ、泣きそうな表情をした山崎がそこにいた。


「烝さん…」

「ありがとう。…ありがとう、かなめ。まさかこの俺が…父親になれるなど…思ってもいなかった。…そうか…そうか…」


「はい…、ですから早く傷を癒されて、お務めが終えられたら…逸早く帰ってきて下さいね?」

「…あい、わかった」

山崎の目から一筋の涙が流れた。


「戻ってきて一番にややこを抱いてやってくださいな」

「いや、一番はかなめだ」
山崎はかなめの髪を撫でた。

二人は互いを見やり、微笑む。


「…そうだな。」

「名を…名を考えねばならんな。」

山崎は天井を見ながらしばらく考える。

それを嬉しそうに見つめるかなめ。




「そうだな…男なら歩務(あゆむ)。歩くに任務の務だ。女なら未奏(みかな)。未来を奏でる…でどうだろう」

「歩務と未奏…。良い名ですね」

かなめは山崎に笑いかける。

「…この時代を強く、生きてほしい」

山崎は天井を見つめて、口元に笑みを浮かべた。



かなめは立ち上がり、山崎に背を向け着物を脱ぎ始めた。

「何を…しているんだ…」

長襦袢姿になったかなめは山崎の隣に座り直して手を取り、
長襦袢の間から直接自身のお腹を触らせた。

「気のせいかも知れませんが…。少しだけ…少しだけ、お腹がふっくらとしてきたんです」

「ああ、わかる。ここにいるんだな。」
山崎はかなめのお腹を見つめたあと、かなめに微笑んだ。


「…かなめ、身体が冷える。早く着物を着るんだ」

「はい」
かなめはくすりと笑って着物に腕を通していく。

その様を優しい目で見つめる山崎。



「かなめ、お前にはいつも寂しい思いをさせているな、すまない」

「何度同じことを言うんですか。気にしないで下さい。
烝さんをお慕いした時からわかっていたことですから。」
山崎の手を撫でながら微笑むかなめ。


「俺のいない間、ややこを頼む」

「…。」
黙って俯いてしまうかなめ。


「…やはり、行ってしまわれるのですか。怪我を治してからでも…」
眉間に皺を寄せ、懇願する。

「すまない…。俺は新撰組なんだ」

かなめに優しく声をかける。

かなめは俯いた。



「かなめ、傍にいなくても、いつも君を見ている」

「そんな…。そんな言葉、嬉しくも何ともありません…。
まるで別れのような言葉を…言わないで下さい…」

かなめの目が潤みだす。


「…すまない。また俺が帰ってきた時…いつものように、笑顔で俺を迎えてくれ」

「…わかりました。ずっと待っています」

かなめは微笑み、山崎の口元に口付けを捧げた。







山崎が眠りに落ちた頃、廊下から声がかかる。

「山崎、かなめ、入るぞ」

「…どうぞ」

襖を開けて土方が入ってくる。


「…寝てるのか」

「はい」

土方はドサっと座り、一息ついた。


「かなめ、山崎をこんな姿にしちまったのは俺の責任だ。すまなかった」
土方はかなめに頭を下げた。


「頭を上げてください、土方さん。きっと山崎は土方さんを庇う為に傷を負ったんですよね?
なら謝らないでください。部下が頭を守れずにいてどうするんですか」

かなめの言葉に目を丸くした土方。

「はっ、似たようなことを言うんだな。…それが夫婦ってやつか」
土方は眉間に皺を寄せて口角をあげた。


「山崎をここへ置いて…」

かなめが土方の言葉を遮る。

「山崎から新撰組を取ったら何も残りません。この人の生きがいであり、命ですから。
最後まで近藤さんや土方さんの傍で新撰組としていさせてあげてください」

「…わかった。…強いんだな、かなめ」


かなめの目から一筋の涙が伝う。

「強くなんてありません…」

土方は目を伏せた。


「…。近藤さんや総司が世話になったな。新撰組として礼をいう」

「勿体無いお言葉ありがとうございます。」
かなめは頭を下げた。


「今夜、船で江戸に向かうこととなった」

「…はい。ご武運をお祈りしています。土方さんも山崎が守った命を粗末にするようなことは止めてくださいね?」

「ああ。」

「山崎を宜しくお願いします」
かなめは手をつき、深々と頭を下げた。

「わかった」






新撰組を乗せた船は夜を待って出航した。



















船室にて苦しそうな山崎。

付き添う千鶴。


「山崎さん、しっかり」

「帳面は…、帳面は持っているか」

「ちゃんとここに持っています」


「雪村くん、君にしか…出来ないことを、為せ。…皆を…頼む」

「何言ってるんですか?このまま戦が続けばまだまだ怪我人が出ます。
医療担当の山崎さんには早く元気になってもらわないと。
かなめさんも心配しますよ?」


「いつまでも…横になって…楽を…しているわけには…いかないか…」



『…かなめ…』



「そうですよ!江戸に… … …」

千鶴の声が遠のいていく。




『…かなめ…』

脳裏に浮かぶのはかなめの姿。





『かなめ…、

いつも傍にいれなくてすまなかった。

この身は滅んでも君の元に帰ろう。




これからはずっと傍にいる。』











千鶴は別の船室で会議を開いてた幹部たちに報告する。

幹部たちは山崎の元に駆け付ける。



皆が見守る中、土方が口を開く。

「新八、この時間なら今船はどの辺りにある?」


「まだ紀州沖だ」


「よし、水葬にする。早く準備しろ」


「原田は近藤さんに伝えてきてくれ。平助は総司を連れてこい」


「ああ」

「わかった」


「こいつは…山崎はかなめの所に帰るんだ。
紀州ならまだ大坂に近い。近い方がいいだろ?なぁ、山崎」

















身は海へと揺らめき落つる。


様を見ていた空は声にならない悲鳴をあげる。






















江戸から近藤と土方からの文と共に、山崎の遺髪が届く。


顔の前で両の手に遺髪を持つかなめ。


あの細く…長い…髪。



「おかえり…なさい…ませ…」

絞り出すような声。



涙という涙が溢れ出る。



今のかなめには涙を止める術を持たず、

嗚咽を止める術も持たない。



そのまま遺髪を握り締めたまま、土下座するように床に崩れ落ちた。







外からの冷たくも柔らかい風がふわりとかなめを包んだ。


空がカラカラと鳴っていた。





















◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






千鶴との会話はアニメをなぞらせてもらいました。



どんな些細な言葉でも構いません。


御言葉残して頂けたら幸いです。


ありがとうございました。




明日、この後の話をアップします。

それもあわせて読んで頂ければ嬉しいです。






みふゆ