どMなキョンです
昨日アップした「歌い手になるためのマンガ」が予想以上に反響が大きかったので
自分なりの補足を書いてみようと思います。
一般人の戯言なので気分を害される方がいたらおらかじめお詫びしておきます。
まずはボカロを取り巻く様々な風潮についてなんですが
なぜここまで歌い手が叩かれるようになってしまったかを自分なりに考えてみた。
そもそも初音ミクは「曲は作れるけど歌ってくれる人がいない」アマチュア作曲家のために開発されたもので、優れた楽曲を提供する作曲家(ボカロP)の曲を、歌唱力の高い人(歌い手)が「歌ってみた」りすることで、ボカロ文化は広く認知されるようになった。
こういった経緯を踏まえたうえで、ある程度文化が成長してくるとそれが細分化してくる
・初音ミクのファン
・ボカロPのファン
・歌い手のファン
もともと共存し合って成長を遂げてきた3者に固定のファンがつき始めると、当事者の意向とは思わぬ方向へと事態が変化していく
①初音ミクのファンは「ミクの歌」を他の人が歌うのが気に入らない
②ボカロPのファンは「好きなPの作った曲」が歌い手の人気の餌になっているのが気に入らない
③歌い手のファンは「好きな歌い手の歌った歌」を、他の人が歌うのが気に入らない
①初音ミクのファンは「ミクの歌」を他の人が歌うのが気に入らない
①に関しては「千本桜」のミュージカルをAKB石田晴香が演じたことに腹を立てた初音ミクファンがTwitterを炎上させたことが記憶に新しい。
twitter 大炎上 千本桜 ミュージカル決定 ミク役はAKB ボカロ厨大発狂
楽曲提供者(黒うさ氏)自身が許可を出し、楽しんで欲しいと願って企画したにもかかわらず受け入れられなかったのは残念だが、AKBという別の固定ファンがついているアイドルに「誰のものでもない存在」である初音ミクを演じさせたのがまずかったのではないかと思う。(本来はここで揉め事が起こること自体おかしいし、企画側に何の非もないのだが)
初音ミクはアマチュアクリエイターや何かを目指す若い世代の自己投影の象徴でもあり、彼女はどんなものにも自在に変化し、表現してくれる。
一方、アイドルはすでに「願いを叶えた完成された存在」であるため、その二者を混ぜ合わせようとすると違和感を感じるのだろう。
「ミクを汚された」という言葉の裏には、「自分と同じ場所にいたミクが遠いところへ行ってしまった」=自分を否定されたという悲しみの感情があると思われる。
同じように「歌い手」がメディアに取り上げられ、有名になり始めると、これもまた受け入れるのが辛くなってくるのではないか。歌い手バッシングは羨望や憧れの裏返しの気持ちも含まれている、と思う。
いずれにせよ、初音ミクというキャラクターは「人と人をつなぐためのきっかけ」でもある。ミクさんが原因でケンカをしていたら、彼女も悲しんでいるんじゃないか。
②ボカロPのファンは「好きなPの作った曲」が歌い手の人気の餌になっているのが気に入らない
ニコニコ創成期の頃からボカロ曲を聴いている人にとっては、コツコツと楽曲を作ってきたボカロPを長年応援してきた訳だが、最近の歌い手ブームに怪訝な顔をする人も多い。
これはもう、この曲が代弁してくれているので多くは語らないが。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm20388234
もちろん、全ての歌い手がそうだとは思わないが
「自分の人気が出るならどんな曲でも構わないから歌う」という風潮が反感を買うのだろう。
ちょうど、コミュレベルを上げるためになりふり構わずネタに食らいつく生放送主に似ている。
ボカロP側としては、作った曲が見向きもされないのはそれはそれで寂しいが、オリジナルより歌い手の歌ってみたのほうが再生数が多かったりすると
あっ…(察し)
と感じたりするんだろう。
ただ、「歌ってみた」のおかげでその曲が認知され、メロディーが耳に入ってくるという共存関係にあるためにボカロPとしても複雑な心境なのではないか。
プロの作曲家のように固定の歌手のために作られたわけではない楽曲は、初音ミクという人格を持たないキャラクターが歌ったものが「オリジナル」とされているので、それを「歌ってみる」ことで原作の改変という過程を踏むことになる。
原作よりアレンジされたモノの方が評価され、それが長期間続くとなると、オリジナル製作者のモチベーションは下がる一方という状況も考えられる
当然、プロを目指しているボカロPにとっては通過点でしかなく、一時の評価よりもさらに上を見ているだろから、大した問題ではないのかもしれないけど。
歌ってみたを投稿するときはオリジナル音源にリンクを貼って、楽曲製作者に敬意を表そう。
③歌い手のファンは「好きな歌い手の歌った歌」を、他の人が歌うのが気に入らない
歌い手のファンの中には、その人を好きなあまり、他の人の動画に「○○さんのほうが上手い」とコメントをつけて回る人がいる。
他の方の動画で私(歌い手)の名前を出すのはご遠慮くださいと注意書きがされているのはまさにこれのことだ。
人の趣味嗜好はそれぞれだし、万人に好かれる人間やコンテンツも存在しない。
あなたが神と崇めているその人も、誰かから見たら毛嫌いされている存在かも知れない
まずそれを認めるところからはじめないと、いつまでもこの問題は終わらない。
少なくとも、頭の中でそれを感じたとしても、口に出したりコメントするのはよろしくない。
マイナス評価をするなという意味ではなく、「他人と比較して相手を落とす」のは良くない。
子供の頃、親に叱られた時に
「○○ちゃんはもっとできるのに、あなたはどうしてできないの」という叱り方をされたらイラッとくるのではないだろうか。 それと同じだ。
こういったマナーを欠いたファンが動画を荒らしたりするために、歌い手はさらに叩かれている。歌い手の中には生放送でファンにマナー教育している人もいるが、大変な苦労だと思う。
④特に何のファンでもない人は「ボカロや歌い手という文化」が気に入らない
ここからは蛇足だが、こういった文化に全く興味のない人もニコニコ内に存在する。
「初音ミク?きめぇ」
「ボカロPとかwwwww」
「歌い手とかなんなの?」
という書き込みにピキッと来ることもあるが、これが現実なのである。
一般人から見たら、「素人たちが作った曲を歌う素人に夢中になって騒いでる素人たち」といった図式に見えるわけで、そんなものに夢中になったり、目指しちゃったりするのは中二病だとしか評価されないだろう。
素質があって努力した人しか成功できないボカロ業界、ましてやプロとして仕事を始めたからといって待遇がいいとは限らない崖っぷちの世界である。
ある程度人生経験を積んだ人から見たら「そんな現実性や将来性に欠けた趣味みたいなものにうつつを抜かしてる暇があったら勉強しろ」と言うだろうし
ハナっからそれに気づいていてこのブームを冷めた目で見てる人もいるだろうし
もしくはそんな何かに夢中になっているひとが妬ましく、うらやましくもあり、やりたいことも見つからない自分に焦りを感じながら、みんなをディスることくらいしかできない人もいる。
もう、そういう人種の人とは、考え方が違うので言い合う必要はないと思う。
最後に
「ボカロP」も「歌い手」もみんながゼロスタートで「最初はパソコンやマイクの使い方すらもわからなかった」という話をよく耳にする。
自分自身、歌ってみたり、Mix作業をやってみて初めて難しさがわかったこともある。
ボカロに携わる人は仕事ではなく趣味としてやっている人のほうが圧倒的に多いわけだけど、それまで日の目を見てこなかった自分が、何か一つのことを頑張れば脚光を浴びることかできる、自分の好きなことを仕事にできるかもしれないという可能性も秘めている。
そういった努力をしてる人はカッコイイし、なりたい自分になれた人はスゴイと思う。
あのコラージュ漫画では、歌い手を目指す女の子を多少ディスった表現も含んでいるけれど、それ自体を否定しているわけではないことをご理解いただければと思う
ボカロの文化が成長していく過程で、いろんな人の思いが交差して、あちこちで軋轢が生まれるのは仕方ないことだとはおもうけれど、それ自体がこの文化の成長を止めてしまうことがないように祈る。
結論:みんな、仲良く!
※歌い手になる=ビッチ化というのは元ネタによるものです。