こんにちは。公認会計士の内野恵美です。
少し間隔が空いてしまい、恐縮ですが、利益の概念の補足をします。
利益と類似した概念として「剰余金」という概念があります。結論からいえば、とくに非営利法人においては、両者の中身は同じです。非営利法人は「法人の構成員に対して剰余金の分配ができない」等々言われることがありますが、これは前に述べた「利益の非分配」と同じ意味で使われています。
企業会計原則においては、剰余金とは、「純資産のうち法定資本を超える部分」をいい、資本剰余金と利益剰余金に分けられます。資本剰余金は資本のうち法定資本以外の部分で、利益剰余金は利益から構成されます。
これに対して非営利法人は、構成員に持分はなく、資本取引も想定されません。
その結果、純資産の額は利益剰余金の額に等しくなります。ご存知のとおり、その非営利性から株式配当や役員賞与等の利益の分配は行われません。
したがって、純資産の額は、原則としては(※)、事業活動による利益の増減によってのみ、変動します。
言い換えれば、純資産の額は、一定時点の資産と負債の計算上の差額に過ぎないのです。
このように非営利法人における剰余金は、株式会社とは異なり、原則として過去に獲得された利益の累積により構成されることになります。
なお、公益認定制度においては、いわゆる収支相償(公益法人認定法第5条第6号、第14条)において収入が支出を上回る状態を「剰余金」が生じたといっていますが、これらは必ずしも利益が生じたことと同じ意味とはいえません(近いとはいえますが)。
本日もここまで読んでくださってありがとうございます。
非営利の会計でお悩み事があればお声かけください。
(追伸)下にちょっと補足ありますのでご覧くださいね。
(※)の説明
社団法人は基金を募集することができます(一般社団・財団法人法第131条)。
基金は、募集を行い、外部資金を調達する点において、事業活動による利益の増減ではありませんが、会計上は正味財産増減計算書(損益計算書)で基金増減の部を設けて会計処理・開示されることとなり、貸借対照表の純資産の部を直接増減させる資本取引とは位置づけが異なります。
なお、ここでいう基金は一般社団・財団法で規定された社団法人のための基金(純資産の部)をいい、よくいわれる資産側の「◯◯基金(特定資産)」とは性質を異にするものです。この点については別の機会にご説明いたします。