焦げ茶色の午後    あなたは、自由に考え、発言出来ている? | 御苑のベンゴシ 森川文人のブログ

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 もし、「なんか最近、いくらなんでも戦争に向かってない?この国」とか、「治安ってホント、悪くなってんの?」とか「原発ってやっぱやばいんじゃない?桜島を噴火するし」など、日本政府の方針と違うことを思ってしまった場合、それをおおっぴらに口にすることは出来てるでしょうか?
 「思ってるけど、別に言いたくないもん」とか「まあ、どっちが正しいかよくわからないし、忙しいし」などの理由はあるでしょうけど、そもそも、思いつかない、言いたくない、って時点で、すでに萎縮させられているのかもしれません。

 しかし、どうやら政府は、それでもまだ、締め付けが足らないと思っているようで、もっともっと発言しにくい、みんなで力を合わせて政府に逆らうようなことがしにくい環境作りに勤しんでいます。

 昨年施行された特定秘密保護法は、国家権力にとって都合の悪い情報を全て隠し、戦争に動員するための言論弾圧をもくろむ治安立法そのものです。秘密にすること自体、秘密にしてしまうのです。権力が情報を独占し、支配する、ということです。
 さらに、3月13日に閣議決定のうえ、国会へ提出された「新捜査手法」法案は、特定秘密保護法とあいまって、まさに、かつての「治安維持法」体制の構築が狙われたものだと思います。
 ・「通信傍受法」(盗聴法)の改悪
まず、1999年にできた「通信傍受法」の改悪、つまり盗聴を容易化し、かつ拡大しようとしています。全国の警察・警察施設で警察官らが立会人なしの盗聴が可能になり、しかも、盗聴対象は詐欺、窃盗、傷害などを加え飛躍的に拡大させようとしています。これらの犯罪まで含めれば、およそあらゆる名目で盗聴を実施することが出来るも同然です。つまり捜査機関による盗聴がやり放題。
 ・「司法取引」とは
 「司法取引」とは、検察官が、被疑者や被告人に対し自分の刑を軽くする代わりに「他人の刑事事件に関する事実」を明かすよう「取引」することを求められるという制度です。
 要するに自分が助かるために他人を売り渡すことを奨励する密告の仕組みということになります。密告が虚偽だと認めると「懲役5年以下」の刑に処せられるので、そのまま虚偽が真実としてまかり通ることになるでしょう。様々な団体・組織の内情を聞き出し、分断を生みだし、仲間の亀裂を入れ、組織・団体を破壊するために用いられるでしょう。
 ・証人隠蔽制度の新設
さらに、証人を隠蔽するための制度、つまり「匿名証人」制度も用意されています。今でも、証人の証言に影響を与えないという名目で衝立やビデオリンクを利用しての証人尋問が行われていますが、さらに「証人や親族が害を加えられ、畏怖・困惑のおそれがみとめられたり、名誉や平穏が著しく害されるおそれ」があるときは被告人に氏名や住所を明かさない証人を認めるという制度です。被告人が、誰だか知ることのできない匿名証人の証言により犯罪者としてでっち上げられ、処罰され得ることになってしまうのです。
 ・取調べの録音・録画制度の導入の意味
 マスコミ等で用いられている「取調の可視化」という言葉は本質を見誤らせるもので、あくまでも「捜査機関による取調の録音・録画」です。検事が自白調書の任意性等を立証するための制度、ということです。何日も拷問のような取調が続こうと、自白がなされた取調の録画・録音だけ提出すればいい、という仕組みです(録音しなくてもいい例外もたくさんある)。被疑者・被告人の人権が守られるどころか、単に捜査機関に弾圧のための武器を与えるだけなのです。
 ところが、日弁連執行部は、昨年、このような治安弾圧策動に対し「全面可視化の第一歩」などと評価し「肉や野菜だけでなく、毒饅頭も出されている。肉や野菜しか食べないという訳にはいかない」(宮崎誠日弁連推薦委員)などと賛成に回ってしまいました。この「録音・録画」の本質を「肉や野菜」=必要なものと容認しているのです。これに対しては、「法律家としての想像力を持たない最悪の選択」だという批判も出されています。

 『茶色の朝』(フランク・パブロフ)で、最後、主人公はこうつぶやきます。
 「抵抗すべきだったんだ。でも、どうやって? 政府の動きはすばやかったし、俺には仕事があるし、毎日やらなきゃならないこまごましたことも多い。他の人たちだって、ごたごたはごめんだから、おとなしくしているんじゃないか?
 だれかがドアをたたいている。こんな朝早くなんて初めてだ。・・・」

政府の狙いは、誰にでもある弱さ(臆病、怠慢、保身等)につけ込んで、政府に異議を唱えることを萎縮させ、仲間を裏切らせ、疑心暗鬼に追い込み、人の繋がりをなんとしても破壊する、ということだと思います。
 いまや、「茶色の朝」は、「焦げ茶色の午後」になりつつありますが、このまま、「真っ黒な戦時体制下の夜」を迎えるわけにはいきません。なんとしても、この法律をさせないよう頑張りましょう!