- 桂 望実
- 県庁の星
勝手に採点 ☆☆☆☆☆!
民間企業との人事交流の一環で地元スーパーへ1年間
の研修を命じられた若手の県庁職員・野村。
くたびれたスーパーでの慣れない仕事に嫌気が差しながら
も、配属された惣菜売り場で繰り広げるお弁当の販売競争。
お役所仕事が得意な彼が、安価で庶民に愛されるお惣菜を
使ったお弁当で、主婦たちの嗜好を凝らしたメニューに勝て
るのか!?
主語が省略され、これ誰がしゃべってるの?と戸惑ったり、
会話中心でページ数も少ない軽いタッチの作品ながら、
ラストにかけて爽やかな感動に包まれた。
誰もが主役である県庁さんに感情移入せずにいられないはず。
自意識過剰、お役所意識丸出しで鼻持ちならない登場から、現
場の視点に立たない教科書的発想、物言いで周囲からまったく
浮いた存在になっていく。
しかし、結婚詐欺や自身で考案お弁当の販売不振、県庁同僚の
裏切りなど、ネガティブな経験に晒されながら人間的な成長を遂
げ、高慢なエリートからひたむきな努力家へと変貌する。
消費者やスーパーで働く同僚たちの視点に立った仕事ぶりに絆
され、周囲が徐々に心を開き、一体となって行く様は、ある種
スポ根ドラマに通じる爽快感。
彼に的確なアドバイスを与えるパート主婦泰子の存在もピリッと
した緊張感を与え全体を引き締める。
こんなおばちゃんいるいる!と思わせる親しみを覚える設定が妙。
研修後の彼のような思考を持って行政に携わっている人間は
一体どれほどいるのだろう。
お役所で働く方たちにぜひ読んで欲しいもの。