- グレイス ペイリー, Grace Paley, 村上 春樹
- 最後の瞬間のすごく大きな変化
勝手に採点 ☆
40年間でたった三冊の短編小説集の出版で年を追うごとに
文名を上げ、全米に熱狂的ともいえる女性読者を抱える著者
の代表作。訳者はあの村上春樹。
読後の第一印象は「キッツー!!!」
これほどまでに読了に時間を要し、途中で何度も辞めたくなった
小説はない!
その理由は、難解な文章構成。
特に著者をモチーフに家族や起こった出来事を語る「フェイスもの」
いったい誰が何のことを話しているのか分からず、象徴的な比喩
のオンパレードによって混迷の度を深めていく。
著者が長編小説を書かなかったのは良かった!?
しかし、村上春樹のあとがきは一読の価値あり。
これで大いに救われた。
確かにこの原文を日本語訳するのは至難の業のはず。
アメリカの大学で教鞭をとった彼でさえ、彼女の朗読会を聞いて
内容が理解できないとは。
あとがきでは、彼が「不思議な中毒性」があると公言するグレイス
ペイリーの作品を訳したくなった理由がなんとなく伝わってくる。
だが、活字離れの進む日本人が彼女の文章を読みこなすのは
ちょっと不可能。