- 重松 清
- いとしのヒナゴン
勝手に採点 ☆☆☆
ある地方都市の比奈町に出現した謎の怪物。
町に因んでつけられた名前は「ヒナゴン」
その実態解明のため町役場に作られた「類人猿課」
に勤める信子を中心に語られるドタバタ劇の顛末とは。
重松氏得意の郷愁を誘いながら、過疎や農村の後継
者問題を「ヒナゴン」騒動に絡めながら独特のタッチ
で丁寧に描いている。
さすがに珍獣ヒナゴン探索劇でストーリーを引っ張る
には文量が長すぎる。
着ぐるみのニセモノ発覚や住民からの誤報なども想定
内のエピソードで意外性なし。
一方、町長のイッチャンはいい味出してる。ド田舎の
元ヤンキーで夢と男気を忘れないちょっとした独裁者。
主人公をライター崩れの信子にするよりは、元同級生
の教師を主体にしたほうが入りやすい気がする。
信子とその教師、役場に勤務する西野の関係も曖昧な
まま物語は終息する。
いいかげんみんないい大人なのだから、ちょっとした
愛憎劇を繰り広げてもいいんじゃない!?
登場人物があまりにみんな「いいひと」で純粋すぎる
のもストンに腹に落ちてこない理由のひとつ。
特に町長選はあまりに美談になり過ぎ。
重松氏特有のペーソス漂う作品を期待したい。