著者: 村上 春樹
タイトル: ノルウェイの森 下

勝手に採点 ☆☆☆☆☆!

村上春樹の代表作である大ベストセラー。

主人公の大学生ワタナベと自殺した親友キズキの彼女・直子との
悲しい関係とそれを取り巻く人々を描いた青春小説。

題名であり、ビートルズの楽曲でもある「ノルウェイの森」という冷たく
暗い響きが物語全体を包む陰鬱な寂寥感を如実に表していて見事。

前に読んだのは学生時代だったが、今改めて読み返してもあのとき

味わった感覚、印象がよみがえってきてページをめくるのがついつい

もったいなく感じる。

他の作品と異なって、主人公の心象奥深くを探求するような幻想感、

象徴性は影を潜め、ワタナベがどう感じて、どう行動したかが平易に

描かれ、会話中心に話が進んでいく。

登場する人物は少ないもののみんな個性的で魅力的。
直子、キズキ、緑、レイコ、永沢、ハツミ、突撃隊・・・。

彼らとのエピソードひとつひとつが心に残り愛着を感じる。

緑やレイコさんとの親交、触れ合いによってようやく立ち直るキッカケ

を掴み始める矢先に物語りはあっけなく終わりを迎える。

その後に包まれる何ともいえないせつなさ、悲しみ、迷い、後悔、混沌、
希望は心に不思議な感覚をもたらし、深い感動が胸に刻まれる。

「生は死の対極にあるのではなく、我々の生の内に潜んでいる」
この村上作品に共通する命題を理解できるのはいつのことだろう。