$あれも聴きたいこれも聴きたい-DJ Suketu インドのクラブにはほとんど行ったことはありません。全くないわけではありませんが。そのインドのクラブでは、かなり前から昔のインド映画音楽のリミックスが定番になっているといいます。

 そう言えば、インド映画のサントラ・アルバムのボーナス・トラックとして、ほぼ必ずリミックス・バージョンが収められています。映画の中でも踊っていますから、自然な流れですね。

 DJスケツは、ムンバイの大学に通っている頃からDJを始めました。92年のことです。学校で開かれるパーティーに呼ばれるDJたちが結構なお金をもらっているのを目にして、自分にやらせろと校長にかけあったのがDJデビューのきっかけだといいますから面白い人です。

 こうしてお金を稼ぎながらめでたくMBAを取得した彼は、97年にDJの世界的なコンテストであるDMCワールド・チャンピオンシップ大会のインドの部で第三位になりました。その後、バーミンガムで世界チャンピオンの指導を受けて、99年に帰国、今度はDMCにて見事にインド・チャンピオンに輝きました。

 CDデビューは2002年。デビュー・アルバム「440ボルト」は、リミックスとしては、インド史上最大のヒットとなりました。

 このアルバムは彼の作品としては4枚目になります。CDは2枚組で、1枚目は新しいリミックス集、2枚目はノン・ストップのDJセットとなっています。どちらも、あまり冒険があるわけではなく、原曲を大事にした四つ打ちのリミックスです。

 2枚目の方はインドのみならず世界のヒット曲が連なっていて、インドのクラブを彷彿とさせます。行ったことないですけど。アッシャー、ブリトニー・スピアーズ、シャキーラから、懐かしいところではマイケル・ジャクソンまで。いかにもインドな選曲です。

 こうした曲に挟まれて昔のインド映画の名曲が流れると、その素敵なメロディーが際立っていてかっこいいんです。私のお勧めは以前ご紹介した古い方の映画「カーズ」の「エーク・ハシナ・ティー」です。リメイク版ではなくて、わざわざ昔のものを持ってくるところが素敵です。

 この大竹まことに良く似た男、DJスケツは、私がインドに住んでいた2008年頃、インドのナンバー1DJとして紹介されることが多かったです。他にも結構実験的な人たちもいましたが、彼は正統派で安心感があるのでしょう。

 大たい彼は、インドのDJはいやいや映画音楽をかけてるようだけど、自分は好きでかけている、と言い切っています。特に昔のボリウッド映画のメロディーに魅せられているのだそうです。プレイが愛にあふれているかどうかは、おのずとスピーカーから出てくるのでしょうね。

Ultimix / DJ Suketu (2008)