ミニコミ紙で、貰ってくれませんか?のコーナーに出ていた子犬を貰いに行った。
父は血統書付きのチャウチャウ犬。
母は血統書付きのシベリアンハスキー。
貰ってきたこいつは、完全無欠の雑種。
それでもどっからどう見てもハスキー顔。チャウチャウの面影すらない。
色々いたのだが
「この子かわいい」
と、妹が抱き上げたので、そいつに決定。兄貴の意見は全く反映されなかった。
家に帰って、こたつの上に置いてあったミカンのカゴに、貰ってきたばかりのそいつを、入れて、命名会議。
「ラッシー」
「ジョリー」
「はち」
「女の子だからダメ!!」
私の提案した名犬シリーズはことごとく却下された。
「桜子」
「晴美」
「洋子」
当然、親父行きつけのスナックのおねぇーちゃんシリーズも却下。
紆余曲折あって、「ジュンちゃん」と命名された。
今まで、我が家では何匹か犬を飼ったことがあったが、こいつは、歴代の中でも特にバカだった。
子供の頃、庭を必死に掘っているなぁ。と思ったら、ガス管を食い破って大騒ぎになった。
私がジュンを叱ると決まって私の部屋(二階)まで上がってきて、ウンコをするのだ。二階には他に妹や両親の部屋があるにもかかわらず。決まって私の部屋にする。
わざとやっているに違いない。
「バカ犬!!!」
U ̄ー ̄U ニヤリ
やんちゃっぷりは、2歳になっても変わらなかった。変わったところと言えば、子供の頃あんなに、ハスキー顔だったのに、成長するにつれ、顔がファッサ、ファッサの白い毛が生え、顔だけチャウチャウになった。体はハスキー。
変な犬。
大人になってもやんちゃなジュンは、何度も首輪を外して逃亡し、何週間いや、長いときは何か月も帰ってこなかったこともあった。
(通報があって、迎えに行くと、ちゃっかりよそ様の家でかわいがられていた。)
輪抜けをして、「また逃げた!!」
と、騒いでいると、近所の散髪屋から電話がかかってきて。
「ジュンちゃん、また、ローソンのヤンキーにお菓子貰ってるよ」
と、チクリの電話があって、御用。
ジュンの脱走にかける執念は凄まじい。
ある時なんかは、家を囲っているフェンスをよじ登ろうとして、足が3分の2取れかかっていた。
オカンが「ああああああああ」阿鼻叫喚。騒いで病院まで連れて行き、かろうじて足は取れずに済んだ。
「ジュンちゃん!!」
と、家族が怒るのも素知らぬ顔で
「なんかちょうだい」
と、いつも通り、お手とお代わりを繰り返すのだった。烈火のごとく、仁王さながらのオカンにその態度。まさに破天荒ここに極まれり。
性欲も飛びぬけてお強かったジュンちゃん。
盛りの時期になると、犬小屋にベニヤ板を親父が苦労して貼り付け、「男除け」
をしていたのだが、ベニヤ板をこりこりと前足と歯で破壊していたのは、男子ではなく、ジュン本人だった。
誰のための防犯装置だと思ってるんだ。
と、親父殿はご立腹だったが、親父が板を張っても、張っても、ジュンが破壊しつくした。
破壊して少しの隙間ができるとジュンは隙間に膣を押し付けて、男根を迎えるのだった。
妹が思春期の時は、帰りが遅くなる妹に対して、両親は、
「ジュンみたいになる気か!!!」
と、淫乱の代名詞のように使われていた。
そんな、ジュンが死んだ。癌だった。
その夜、家族全員に緊急招集がかけられて、お寿司を取ってお通夜をした。次の日。家族全員有休を取り、仕事を休んで、焼き場に行った。
家族全員で「どうやって、仕事を休むか会議」の結果。何年も前に亡くなった叔母に、もう一度ご足労願うこととなった。
ジュンはバカでしょうがなかったが、今まで飼った犬っころの中で最も印象に残っていて、かわいい奴だった。
獣医の知り合いに後日聞いた話だが、ジュンは、飼い犬として最も向いていない犬種の第一位と第二位の雑種だったらしい。
それを家族にはなすと、皆「あぁ」と首を縦に振って納得していた。
U^皿^U ウシャシャシャ