→『甘い密会 1 』はコチラから。





マンションの広い通路。



エレベーターを下りて、長いその通路を歩いた先、


数軒並んだ玄関ドアの一番奥が加瀬さんの自宅らしかった。




初めて訪れる場所。


隣に並んで加瀬さんと歩いているだけでドキドキするのに


いきなり自宅になんて、心臓が壊れそうなくらいに高鳴っている。












電話で待っているように言われてから5分程してスタバの前に現れた加瀬さんと一緒に


そのままタクシーへと乗り込んだ。




「今夜は飲むつもりだったから、車で来なかったんだ」




並んで座った車内、前を向いたままボソリと言った加瀬さんの言葉に




「じゃあ、これから飲みに連れてってくれるんですか?」




嬉しくて、ドキドキする気持ちを抑えきれなくて思わず声を弾ませてしまい


自分の顔が赤くなるのに気付きながらも、


すぐ隣にあるその綺麗な横顔に見とれてしまう。






「……そう思ってたんだけどね」






またボソリとそう言って、上司は運転手にどこかの住所を告げた。



それが加瀬さんの自宅のものなのだと気付いたのは、それから20分ほど車で走り


真新しい高層マンションの下に降り立った時だった。









鍵を開け、黒い重厚そうな玄関ドアを開いて「どうぞ」と中に入るように促されて


緊張で強張る顔にぎこちない笑顔を作りながらも、


ドアの中へと一瞬躊躇しながらも足を進めた。





玄関から真っ直ぐ続く廊下は少し暗めのダウンライトで照らされていて


その独特の落ち着いた、どこか寂しさを感じさせる雰囲気が、ここの住人の人となりを


表している様で、どこか切ないような気持ちになる。




玄関口で、それ以上中に入るのを躊躇っていると




「どうしたんだ?入らないのか?」



と背中から声を掛けられ



お邪魔します。




振り返りそう言おうとした唇をいきなり塞がれた。









これまで触れ合えなかった時間を埋め尽くすような、深い深いキス。






静かな空間に、唇が触れ合う淫靡な音だけが響き


その音に


その貪るように求め合う舌と唇の動きに



これまで抑えていた、愛しい人への「触れたい」という欲望が解放されて行く。






その欲望のままに背中に手を回し、微かに抱きしめると


それまで深く重なり合っていた唇が僅かに離れた。






「……誠」





名前を呼ばれ、目を開けると



背の高い上司が僕を若干見下ろすような形で見つめていて


その妖しく潤んだ瞳を、ドキドキしながら上目使いで見つめ返した。





「ホントは、食事をして酒でも飲んで……とか思ってたんだが


 ……我慢できそうにない」






ただでさえドキドキしてるのに



潤んだ目で、濡れた唇で




愛しい人からそんな言葉を貰ったら




心臓が壊れちゃうんじゃないかと思うほどに鼓動が更にスピードを上げる。








なんて返事をしたらいいのかわからなくて



それでも



その言葉が死ぬほど嬉しいって伝えたくて



今度は僕の方から、目の前にあるその綺麗な唇に自分の唇を重ねた。







それに応える様に、焦る様に


侵入してきた加瀬さんの舌が、僕の歯列を割り、奥へと深く差し込まれた。



僕の舌と何度も何度も絡め合う。



愛しくて 愛しくて


そう思う気持ちが溢れだすのを止められなくなって


唇と舌をどんなに絡めても足りなくて


もどかしく感じている僕の心を見透かしたのか




それとも加瀬さんも同じように感じていたのだろうか




不意に唇を離すと



僕の右腕を掴み、無言のまま廊下の奥へと引っ張って行って


幾つかあるドアの一番奥の部屋のドアを開けた。






→甘い密会 3 へ続く


ランキング参加中です♪「読んだよ」の合図にバナーを押して貰えると嬉しいです。

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村