相場格言のひとつに、「人の行く裏に道あり花の山」というが、往々にしてその道はがけと紙一重であることが多い。 現在ドル/円は円買い材料がないことを理由に買いを推奨する人が多い。 主要なテクニカル指標を見ても売る理由が見つけにくく、ここで売り推奨を出すのはアナリストにとって勇気のいることであろう。

 

 ただし、材料としては多くの人が同じ事を考えている場合、一度相場が反対方向に動き出すと、サプライズによって思わぬ動きになることがある。 ここがその格言のいわんとしていることだが、大衆の持つエネルギーは侮れない。

 大衆というと、「常に大衆は間違っている」というのが有名だが、経験では、年に1回か2回は「大衆が勝つ」相場もある。 そのため個人的には「だいたい大衆は間違っている」と呼ぼうかとすら思う。


 で、何が言いたいかというと、常に人の裏をかこうと思索している人が相場にはいて、その人のように動けるようになれ、ということである。 そうすれば人よりも早く動けるのではないかとおもうが、いかんせん人より早く動くということはリスクを伴うわけであり、大衆の波に呑まれることも多い。 そこで見極めが必要になるが、どうやって見極める目を持つか。 自分なりに、かけるところまで書きたい。


1.為替以外の相場を見る
 例えば今年5月のドル巻き戻しによる相場の混乱であるが、金が加速度的に値を上げ年初の532ドルから一時700ドルオーバーまで上昇、その後580ドル付近まで調整が入った(その後は650ドル前後まで戻したが)。 この動きにより他の利益の出ていた株式や為替などの換金売りが一気に出たことにより世界的に信用収斂が起き、結果としてドル買戻しというか売り一色の世界となったのは新しい。 このように為替について言えば、商品や株式からの影響を受けやすいため、他市場を見ていると、次の為替市場のヒントというか、サインが出ていることがある。


2.英語の情報に触れる
 私もそうなのだが、日本人は日本語の情報のほうが見慣れている人が多い(と思う)。 ここが曲者であり、特に夜。 たとえば米指標を例に取ると、ロイター端末の英語版では時間ちょうどに発表となる。 だが日本語に約されるのは多少のタイムラグを経てからであり、そこで時間的な損失がある。 もっとも指標を見てから動いても遅い、というときも少なくはないので、必ずしも早ければ言いというわけではないが。 
 加えて海外勢の意見が生で見られるかどうか、という点で見ると異を唱える人は少ないと思う。 そういうわけで、英語を勉強している人は特に、積極的に英語に触れるようにしたい。 そうすれば英語と相場に強くなって(?!)一石二鳥である。
 もし英語が苦手な方、主要な単語を覚えるだけでも違うと思う。 あとはポータルサイトにある自動翻訳(精度は高いとはいえないが)を併用しつつ、意味が通らない単語を辞書でチェックすれば、英語版の情報に接していない人に対してわずからながらでもアドバンテージが得られるのではないかと思う。


3.何が市場の意見かを知る
 人を出し抜くためには、まず人がどのように考えているかを知る必要がある。 たしかに一部のストラテジストは外部の情報を遮断しているようであり、人の意見を排除して相場にあたるという点では有効な方法であるものの、欠点としては人の意見(=市場の大勢)が見えなくなることである。 やはり人を出し抜くためには、人が何を考えているかを知る必要がある。 
 チャートを信奉する人の中には、「チャートに(未来や過去が)すべてが描かれている」という人もいるが、私自身ですら、チャートを毎日見ているとはいえ、チャートを見てても分かるときと分からない時がある。 現にどんな人でも相場見通しをはずすことを考えると当然なのかもしれないが、もしかすると私自身の修行が足りないからかもしれない。
 話を戻すと、人を出し抜くためには人が何を考えているかを読み、動こうとする一歩前で動けるよう準備しなければならないということである。 そうしないと人を出し抜けない。
 
 他にもきっとあるに違いないが、あとは思い出せなかったのでここまで。 とうぜん多くの人がいる市場の世界だけあって、きっと人の数だけ取引手法があると思う。 この世界は「人に飯のタネを教えると自分が食えなくなる」と考え、こういった取引手法を書かない人が多いものの、私個人としては、相場の世界の発展に寄与したいと思い、あえて書こうと思う。 もし自分がジョージ・ソロスくらいの人間になったら、ディーラーやファンドマネージャーをしている間は取引手法を押さえることは差し控えるかもしれない。 


 今日は相場と関係ないことばかり書いてしまったが、いままで相場が動かず暇だったから。 さて今晩のポイントは【米】5月対米証券投資(22:00)であろう。 もしかするとそれ以上に、明日のバーナンキFRB議長の議会証言が注目されている可能性があるが。


 あと欧州時間では欧と独の7月ZEW(18:00)や【英】6月小売(17:30)といったところが各国の利上げ期待に結びつくかどうかがポイント。 チャートではユーロ/円は146.60円レベルが重くなっており、ここが回復できないと調整入り目される。 とはいえユーロ/ドルが1.2500のレベルでは中銀サイドが食指を伸ばしてくるようであり、一筋縄では抜けないみられるので、値動きが変だとおもったら早めに逃げるようにしたい。 なお今週は週末のメールマガジンまでお休みとなります。 ご了承ください。