短期目標の更新と期間延長(ケアプランの軽微な変更) | まき散歩

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一歩踏み出せば冒険が始まるらしい

 

「実地指導で痛い目を見た」という事業所さんから、

短期目標が切れた後の『第2表』の差し替え依頼を受けた。

 

少し気になったので指導の根拠を探してみる。

 

「短期目標が切れた際」の計画書の作成義務については、

明文化されたものはなかったと思うんだけど・・・

 

が、『緑風園』の掲示板でmasa氏が「基本的に短期目標の期間を更新せねば短期目標のない計画ということで、居宅サービス計画として「瑕疵のある計画」となります」と述べておられ、

 

これに反論できる根拠も自分には探せなかった。

 

すなわち「冒頭の指導に反論できない」ということで、以下は「短期目標終了時に目標期間の新規設定は必要」という前提で調べて行きます。

 

 

まずは、期間についての考え方を

『老企第29号』(平成11年11月12日)から引用します。

 

2 第2表:「居宅サービス計画書(2)」

③(「長期目標」及び「短期目標」に付する)「期間」

 

「長期目標」の「期間」は、「生活全般の解決すべき課題(ニーズ)」を、いつまでに、どのレベルまで解決するのかの期間を記載する。

 

「短期目標」の「期間」は、「長期目標」の達成のために踏むべき段階として設定した「短期目標」の達成期限を記載する。

 

また、原則として開始時期と終了時期を記入することとし、終了時期が特定できない場合等にあっては、開始時期のみ記載する等として取り扱って差し支えないものとする。なお、期間の設定においては「認定の有効期間」も考慮するものとする。

 

(引用以上)

 

 

具体的な業務について、同じく『老企第29号』より。

 

(居宅サービス計画書記載要領)

本様式は、当初の介護サービス計画原案を作成する際に記載し、その後、介護サービス計画の一部を変更する都度、別葉を使用して記載するものとする。

 

但し、サービス内容への具体的な影響がほとんど認められないような軽微な変更については、当該変更記録の箇所の冒頭に変更時点を明記しつつ、同一用紙に継続して記載することができるものとする。

 

(引用以上)


と、「同一用紙に継続して記載」できると書いてあります。

 

 

軽微な変更については、『介護保険最新情報vol.155』にて

 

【目標期間の延長】 単なる目標期間の延長を行なう場合(ケアプラン上の目標設定(課題や期間)を変更する必要性が無く、単に目標設定期間を延長する場合など)については、「軽微な変更」に該当するものがあると考えられる。

 

(引用以上)

 

と述べられています。

 

 

以上を総合すると、短期目標終了時に「単なる目標期間の延長」を行う場合、変更時点を明記して「同一用紙に継続して記載」できる。

 

変更前の用紙にそのまま記載できる訳だから、短期目標の変更を『第2表』に追記して事業所さんに提供することで足りる、と。

 

 

この際の業務について、同じく『介護保険最新情報vol.155』より。

 

3 ケアプランの軽微な変更の内容について(ケアプランの作成)

 

(中略)

 

居宅サービス計画を変更する際には、原則として、指定居宅介護支援等の事業及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚令38、以下「基準」という。)の第13条第3号から第11号までに規定されたケアプラン作成にあたっての一連の業務を行うことを規定している。

 

なお、「利用者の希望による軽微な変更(サービス提供日時の変更等)を行う場合には、この必要はないものとする。」としているところである。

 

(引用以上)

 

とあるので、以下に

『厚生省令38号』の第13条第3項から第11号を転記。

 

三 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成に当たっては、利用者の自立した日常生活の支援を効果的に行うため、利用者の心身又は家族の状況等に応じ、継続的かつ計画的に指定居宅サービス等の利用が行われるようにしなければならない。

 

四 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成に当たっては、利用者の日常生活全般を支援する観点から、介護給付等対象サービス(法第二十四条第二項に規定する介護給付等対象サービスをいう。以下同じ。)以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めて居宅サービス計画上に位置付けるよう努めなければならない。

 

五 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成の開始に当たっては、利用者によるサービスの選択に資するよう、当該地域における指定居宅サービス事業者等に関するサービスの内容、利用料等の情報を適正に利用者又はその家族に対して提供するものとする。

 

六 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成に当たっては、適切な方法により、利用者について、その有する能力、既に提供を受けている指定居宅サービス等のその置かれている環境等の評価を通じて利用者が現に抱える問題点を明らかにし、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握しなければならない。

 

七 介護支援専門員は、前号に規定する解決すべき課題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては、利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない。この場合において、介護支援専門員は、面接の趣旨を利用者及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない。

 

八 介護支援専門員は、利用者の希望及び利用者についてのアセスメントの結果に基づき、利用者の家族の希望及び当該地域における指定居宅サービス等が提供される体制を勘案して、当該アセスメントにより把握された解決すべき課題に対応するための最も適切なサービスの組合せについて検討し、利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、提供されるサービスの目標及びその達成時期、サービスの種類、内容及び利用料並びにサービスを提供する上での留意事項等を記載した居宅サービス計画の原案を作成しなければならない。

 

九 介護支援専門員は、サービス担当者会議(介護支援専門員が居宅サービス計画の作成のために居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等の担当者(以下この条において「担当者」という。)を招集して行う会議をいう。以下同じ。)の開催により、利用者の状況等に関する情報を担当者と共有するとともに、当該居宅サービス計画の原案の内容について、担当者から、専門的な見地からの意見を求めるものとする。

 

ただし、やむを得ない理由がある場合については、担当者に対する照会等により意見を求めることができるものとする。

 

十 介護支援専門員は、居宅サービス計画の原案に位置付けた指定居宅サービス等について、保険給付の対象となるかどうかを区分した上で、当該居宅サービス計画の原案の内容について利用者又はその家族に対して説明し、文書により利用者の同意を得なければならない。

 

十一 介護支援専門員は、居宅サービス計画を作成した際には、当該居宅サービス計画を利用者及び担当者に交付しなければならない。

 

(引用以上)

 

以上は「利用者の希望による軽微な変更」の場合、「必要ない」。

 

 

自身の業務手順としてはこの短期目標の期末に中間評価を行ってる(そのために自動的に照会も行なうことになる)けど、これを短期目標の達成度評価として位置づけています。

 

法令上は必要ないけど、実務上は必要なものなので(だってこれを行わないとそもそも「目標の単なる延長」をしてよいかどうか判断できないもの)。で、せっかくやるんだから記録にしておこう・・・ということで経過記録に記載しています。

 

文書による同意を得る必要もない訳だから、再度、同意を取り直す(第1表に署名捺印をもらい直す)必要はない。でも、これも実務上の問題として同意を得る必要はあるので、経過記録のほうに説明し同意を得た旨を記載しようかと考えています。

 

なお、そもそも軽微な変更であっても省令38号第13条第2号の規定は適用されるわけだから「説明を行う」ことは必要です。

 

少し悩んだのが、同第13条第11号の規定にある「当該居宅サービス計画を利用者及び担当者に交付しなければならない」の判断について。

 

「軽微な変更だから交付する必要がない」と考えてしまうと、短期目標の期間終了後に担当者の手元に残るのは「瑕疵ある計画」ということになってしまう(サービスが瑕疵ある計画に基づいたものになり、事業者側は冒頭の実地指導に反論できない)。

 

よって、これもまた実務上は各担当者が入手しておく必要がある。ゆえに、軽微な変更の種別が「目標期間の延長」の場合には各担当者へ交付をしておくべきだし、それが介護支援専門員としての『マネジメント』なんじゃないかな?と思います。

 

ちなみに私が以前に勤めていた保険者では、ケアマネが各事業所に電話照会をした上で、事業者側が手元にあるケアプランを朱書で変更する形での交付も認められていました。

 

記載の方法は、『第2表』に既に書かれている期間の後ろに書き足す形で延長し、余白部分に変更を行った期日(変更時点)を記入しています。

 

 

目標の内容が「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営む」ために「要介護状態等の軽減又は悪化の防止」(介護保険法)を目指すものであって、「抽象的な言葉ではなく誰にもわかりやすい具体的な内容で」「実際に解決が可能と見込まれるもの」(老企第29号)になっており、その評価や検討が適宜行われるならば、

 

目標の期間については、「原則として開始時期と終了時期を記入することとし、終了時期が特定できない場合等にあっては開始時期のみ記載する等として取り扱って差支えないものとする」(老企第29号)とされていることからも、ある程度、自由度は高いものと考えています。

 

 

[ 参考 ] ケアマネジャーが裁判の被告となった訴訟の事例左矢印

 

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