不倫慰謝料が破産でシャットアウト?~非免責債権の「悪意」~ | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

Q 不倫相手の女が慰謝料を払えないからって破産しました。
  これで慰謝料は払わなくて良いってことになっちゃうのでしょうか。


誤解ありがち度 3(5段階)
***↓説明↑***
1 一般の方でもご存じの方が多い
2 ↑↓
3 知らない新人弁護士も多い
4 ↑↓
5 知る人ぞ知る

ランキングはこうなってます
このブログが1位かも!?
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ
↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

A 原則としては,慰謝料は払わなくて良くなる,です。

【不倫の慰謝料と破産免責】
夫と女性(B)との不倫が発覚しました。
私(A)からBに慰謝料請求をしました。
その後,Bが慰謝料を払えないために破産をしました。
慰謝料は請求できなくなるのでしょうか。

→不倫に至った事情によりますが,慰謝料が請求できなくなることもあります。

まず,破産によって債務を払わなくて良くなることを,正確には「免責」と言います。
破産をした場合は,原則として「免責許可決定」がなされます。
免責が許可されないのは,一定の不正な事情があった,という特殊な場合のみです(免責不許可事由)。
免責許可決定,がなされると,原則としてそれまで破産者が負っていた債務は「免責」となります。
払わなくて良い状態,という意味です。
では,慰謝料も払わなくて良くなるか,というとその事情によって異なることとされています。
慰謝料というのは,不法行為により生じた精神的損害,のことです。
破産法では,「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」は免責の対象外(非免責債権)とされています(破産法253条1項2号)。

[破産法]
(免責許可の決定の効力等)
第二百五十三条  免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。
一(略)
二  破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
三(略)

【非免責債権における「悪意」】
「悪意で加えた・・・損害賠償請求権」として,免責の対象外になるのはどのような損害賠償なのですか。

→積極的な加害の意図・目的があった場合が非免責債権に該当します。

条文上,「悪意で加えた」と規定されています。
一般的に,法律の文言で「悪意」というと,「知っていた」ということになります。
「善意」の逆です。
しかし,破産法253条1項2号(非免責債権)における「悪意」は「知っていた」という意味だとすると,文章全体の意味が通らなくなります。
そこで,例外的に考えられています。
ここでの「悪意」とは「積極的な加害の意図・意欲」という意味として解釈されています(裁判例後掲;なお,この裁判例では,破産法の改正前なので,条文が現行破産法と異なります。ただし,内容は現行法と同一です)。
通説としての解釈でも「単なる故意を超えて,他人を害する積極的意欲を意味する」と解釈されています(青林書院 大コンメンタール破産法 P1087)。

[東京地方裁判所平成13年(ワ)第23574号損害賠償請求事件平成15年7月31日]
 破産法366条の12但書は「悪意をもって加えたる不法行為」に基づく損害賠償請求権は破産による免責の対象とならない旨を規定するが,正義及び被害者救済の観点から悪質な行為に基づく損害賠償請求権を特に免責の対象から除外しようとするその立法趣旨,及びその文言に照らすと,「悪意」とは積極的な害意をいうものと解される。故意とほぼ同義という原告の解釈は採用できない。
 本件の場合,不貞関係が継続した期間は少なくとも約5年にも及び,しかもAの離婚を確認することなく結婚式を挙げたという事情もあるから,不法行為としての悪質性は大きいといえなくもないが,本件における全事情を総合勘案しても,原告に対し直接向けられた被告の加害行為はなく,したがって被告に原告に対する積極的な害意があったと認めることはできないから,その不貞行為が「悪意をもって加えたる不法行為」に該当するということはできない。したがって,被告の不貞行為すなわち不法行為に基づく損害賠償責任は免責されたということになる。
 
【不倫の慰謝料と非免責債権の「悪意」】
結局,不倫による慰謝料は,破産によって「免責」となるのでしょうか。

→不倫の目的が「被害者(妻)への直接的加害」という特殊事情がない限りは「免責」されると考えられます。

裁判例(前掲)において,まさに,不倫の慰謝料が免責されるかどうかが争われました。
<案件の概要>
不貞行為の期間=約5年
特殊性=夫婦が離婚していないのに(不倫の当事者間で)結婚式を挙げた

このように「悪質」な事例です(裁判例でそのように指摘されています)。
それにも関わらず,結論としては「慰謝料は免責」となっています。
正確には「非免責債権ではない」という判断です。
ポイントとなったのは,「原告(妻)に直接向けられた加害行為がない」というところです。

<<告知>>
みずほ中央リーガルサポート会員募集中
法律に関する相談(質問)を受け付けます。
1週間で1問まで。
メルマガ(まぐまぐ)システムを利用しています。
詳しくは→こちら
無料お試し版は→こちら

<みずほ中央法律事務所HPリンク>
PCのホームページ
モバイルのホームページ
特集;高次脳機能障害

ランキングはこうなってます
このブログが1位かも!?
ブログランキング・にほんブログ村へ
人気ブログランキングへ
↑↑↑クリックをお願いします!↑↑↑

夫婦間のトラブルに関するすべてのQ&Aはこちら
震災特例法に基づく被災者(会社)の負担軽減策。税金の還付請求など。by国税庁
弁護士による離婚問題無料相談
弁護士による離婚問題無料相談(モバイル)
個別的ご相談,お問い合わせは当事務所にご連絡下さい。
お問い合わせ・予約はこちら
↓お問い合わせ電話番号(土日含めて朝9時~夜10時受付)
0120-96-1040
03-5368-6030