その後分かったのですが,ちょっと前に養子縁組がされていました。
しかもその「養子」にすべての財産を渡すという遺言が出てきました。
本当にすべての財産が「養子」に行ってしまうのでしょうか。
悲しい時に衝撃の事実が出てくることがあります。
法的な救済措置・対抗策があります。
誤解ありがち度 1(5段階)
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A 遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんざいせいきゅう)という方法により,一定割合は「養子」から取り戻せます。
ちょっとややこしいので,順番に行きます。
先に。
養子縁組自体を疑う作戦もありますが,ちょっと話しがズレますので,置きっぱなしにします。
【遺留分という制度】
相続人が一定割合の相続財産を取得することを法律上保障する制度です。
この制度は,残された家族の生活における物質的な基盤を最低限確保することを目的としています。
限度を超えた生前贈与や遺贈(遺言での贈与)を取り消す制度です。
まさにご質問のようなケースが適用される典型例です。
突如現れた「養子」が「愛人」だったり「遺言で認知した子」だったりするケースもあります。
遺言内容がストレートに実現すると,妻子の元には一切の財産が残らず,路頭に迷うことになってしまいます。
このような場合に,遺産のうち一定の部分は「遺留分」として妻子は「養子」から返還を受けることができるのです。
逆に,被相続人の立場から見ると。例として。
全財産を愛人に渡そうと思っても,それはできない。
(=妻子からのブレーキがある)
熱力学第2法則と同じです(違うやろ,と思った方は 話し,戻ります までスキップ推奨)
熱エネルギーを電気など他のエネルギーに変換する時はロスが生じる
ってやつです。
原発のサイドから温水が出てくる=約30%は電気に変えられなくて熱のまま大海へ
というのと同じです。完全に違いますが・・・
話し,戻ります。
【遺留分の制度で保護される人の範囲】
兄弟姉妹以外の相続人です(民法1028条)。
つまり,配偶者,直系卑属(子または孫),直系尊属(父母または祖父母)ということになります。
【遺留分として保障される範囲】
通常は法定相続分の2分の1です。
ただし,直系尊属のみが相続人,というケースでは,法定相続分の3分の1です(民法1028条,1044条)。
【遺留分の制度の具体的な使い方】
他の相続人や受遺者に対して,遺留分の不足分を請求します。
「遺留分減殺請求」といいます(民法1031条)。
注意点。
この請求権は,遺留分が侵害されていることを知ってから1年以内に行使しなければ,時効によって消滅します。
また,相続の開始から10年が経った場合も同様です。(民法1042条)
具体的方法。
理論上は口頭でも遺留分減殺請求は可能です。
ただ,後から「請求した」,「請求されていない」という争いになることを防ぐために内容証明郵便を用いて請求したことを証拠化しておくべきです。
もしも請求した証拠がないと,後から,「請求していないから時効が成立している」と相手に主張されてしまいます。
内容証明で請求した段階で時効は止まり(中断),このことが証拠化されます。
その後も相手方が主張を固持して遺産の(一部)返還に応じない場合は,提訴せざるを得ないを得ないことにもなります。
提訴する場合でも,その前に時効が中断されていれば,提訴のタイミング自体は相続(正確には遺留分が侵害されていることを知った時)より1年以上後でも問題ありません。
【遺留分減殺請求をした後の結果】
意外と「めでたしめでたし」にはスグにはなりません。
法律的には,請求により,遺贈・贈与された財産(所有権)の一定割合が請求者に帰属することになります。
請求を受けた者は,遺留分を侵害する範囲で,遺贈・贈与された財産を返還しなければいけません。
例えば不動産の一部がこれに当たる場合は,この不動産は結果的に遺留分減殺請求をした者と,遺留分減殺請求をする前の所有者(受遺者)との共有状態になります。
ただし受遺者は,現物返還ではなく,その価額分の金銭を弁償することが認められています(民法1041条)。
逆に「金銭賠償」をしてくれないと,その「養子」と共有状態になります。
結局は問題が後に残ることになります。
共有の解消・解決方法はまったく別の話しです。解決方法自体はあります。
ただし,できる限り,遺留分減殺請求の交渉や訴訟の中で和解による全体的な解決を目指すべきです!
では,ちょっと予防的に。
大災害が起きると,「前の段階であれさえやっておけば・・・」と悔やむことがあります。
【遺留分減殺請求のバトルを避ける方法】
遺留分に関する規定に違反しない内容の遺言を作成することで,この紛争は避けられます。
しかし,不動産・有価証券(株等)の評価は相続時を基準とします。
遺言を書いた時はセーフだとしても,相続時には評価額が変わっていて「遺留分を侵害している」ということもあります。
また,評価方法によって違ってくることもあります(というより,遺留分に関する紛争で評価額で争いがない方が珍しいです)。
ところで,生前(相続の開始前)に,相続放棄をすることはできません。
しかし,遺留分については家庭裁判所の許可を受ければ放棄可能です。
これによって避けることもできます(民法1043条)。
勿論,遺留分放棄をする代わりに生前贈与を受けるとか,相続人候補者(推定相続人)が皆納得することが前提になります。
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