土地は国から借りている? | 法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

法律を科学する!理系弁護士三平聡史←みずほ中央法律事務所代表

大学では資源工学科で熱力学などを学んでいました。
科学的分析で法律問題を解決!
多くのデータ(事情)収集→仮説定立(法的主張構成)→実証(立証)→定理化(判決)
※このブログはほぼ法的分析オウンリー。雑談はツイッタ(→方向)にて。

日本では,土地保有者は「所有」ではなく「国からの借り物」である。
こう言うと突拍子もないことだとお思いかもしれません。

理解しやすい順番でお話しします。

中国
個人・企業とも土地を「所有」できません。
用途別ですが,要はマックス50年の「使用権」を取得することができます。
期間の設定されている使用権なので「期限付所有権」などと言うこともできるかもしれません。
(日本では,一般の「借地」は協力な「更新」システムがあり,容易に終了できません。この常識を覆すのが「定期借地」です。「定期借地」のことを「期限付所有権」と呼ぶこともあります(私が推奨しているだけですが・・・)詳しくはまた別の機会に。余談失礼しました)。
中国人が日本の土地「所有」システムに目を向けるわけです(これも詳しくは別の機会に)。

本当に中国と違うのか
1 墾田永年私財法
「743年に墾田永年私財法が施行されて,それ以降土地の私有制が認められた。『なじみ薄い土地私有の法律』と覚えたよ。中国と違うんだ。」
と思われるかもしれません。
確かにそのとおりです。「なじみ薄い」ってあたりが特に秀逸です。
ちなみに,この「・・・私財法」が施行される前は,国民の土地利用権は「(開墾から)3代まで」という期限が設定されていたのです。
2 現在は
当然,資本主義の大前提である私有制が採られているわけです。
「所有」に期間制限はありません。
(だからこそ,面白いことが起きます。数代前の人しかわからない境界問題。パズルのように入り組んだ土地→通路使用権の紛争に。明示時代の土地所有者登記が架空人物だった(ペンネーム?)・・・これはまた別の話し)
3 本当か
ところが憎い仕掛けが仕込まれています。
それは,↓です!
・相続税(贈与税)
・固定資産税(+都市計画税)

代替わりの時に高額(高率)の相続税を払います。これは借主名義が変わる対価です。言わば「更新料」です。
では,ランニングコストはどうか。毎年固定資産税と都市計画税を払います。これは土地を利用させていただいている対価です。言わば「地代」です。

特に,大都市においては,この「負担」がキツい!
相続税が高いので,仕方なく収益用の土地(マンション+敷地)を手放そうとしても,売れない・物納もダメ→自宅を売るハメに・・・
とか
固定資産税を払うために駐車場として貸したら,ほとんど税額と同じ収入にしかならない
とか

このような過酷な負担を考えると「国からの借地」だと思えてきます。
墾田永年私財法施行前は3世代は土地を利用できたけど,現在のシステムだと3世代持たない!?
こんな悲劇を避けるためには・・・これは別の話し・・・というか私の本業です!

ところで。
一般的な借地で地代を下げて欲しい場合は,「賃料減額請求」とか,減額請求専用の調停が用意されています。使いやすい制度ですし,裁判所(調停委員)も双方から事情を聞いて,相場を柔軟に考えてくれます。
国の「地代」,つまり固定資産税はどうでしょう。国が一方的に決めるだけです。不合理だと思えば,争う手段はありますが「行政訴訟」です。しんどい割に勝ちにくいです。
・・・これもまた別の話し。

というわけで,不動産所有者の苦労を業務上よく拝見している弁護士の想いでした。

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