今日もごそごそ、石鹸材料の整理をしていて、ふと、昔、小学校で習った話を思い出しました。

こんなことを覚えてたことも忘れてましたが。記憶って面白いですね。とんでもないときにほっこり顔を出します。


 「お殿様の茶碗」


 昔々ある城下町に、有名な茶碗を作る職人がおりました。

 その男の作る茶碗は、とっても軽くて丈夫で美しく、その町に来た旅人は、争ってみやげ物に求めました。

 とうとう或る時その噂が、ご城内にも聞こえ、男は、お殿様がお使いになる茶碗を作るように命じられました。

 喜んだ男は、これぞ、一世一代の腕の見せ所、と、秘術を尽くし、とても美しくとても軽いすばらしい茶碗をこしらえて献上いたしました。

 どれだけ素晴らしかったかといいますと、その茶碗は、手のひらの上に載せても、そこにないように軽く、また、向こうの景色が透けてみえるほど、薄い茶碗でした。

 この世で、そんな茶碗が作れるのは、この男、ただ1人でした。]

 検分した家老は、その見事さに、喜び、大変、男を褒め称えました。  

しばらくして、お殿様より、じきじきにお言葉を賜るから、登城するように、と、お城から、沙汰があり、男は、お褒めいただけるに違いない、と、イソイソと登城いたしました。

 お殿様のお言葉。

「そちが、あの茶碗を作ったのか、見事な茶碗である。褒めてとらす。誠、美しい。 だが、私は、あの茶碗を使うようになってから、苦しみに耐えておる。」


 実は、男が作った茶碗は、大変薄かったので、御飯の熱さもお茶の熱さも直接お殿様の手を焼いていたのですね。 

ですが、お殿様は、何事にも動じず、ただ、行儀よく耐えるようにように、という、躾を受けていらっしゃるので、下々のように騒いだりせず、黙って毎食耐えてらしたのですね。

 そのことに気がついた男は(この辺りが、さすが名人ですね。

一を聞いたら十がわかるのです)、大変恐縮し、そうそうに、下城いたしました。

 それから、男は、普通の茶碗を焼く、普通の職人になったそうです。  という、だいたいこんなお話でした。  


 石鹸でも、シンガーソングライターでも、なんでもそうだと思うのですが、作っているうちに段々マニアックになって、自己満足に陥りがちなんですよね~。 

使う人の立場で作られてるのが、いい商品ですよね~。 

あんまり、飛んでない、ちょっといい使いやすい石鹸を作り続けます。

 しかし、今頃思い出すとは。詰め込んどくもんだね、わかってもわからなくても。

 ちなみに、子供の頃、何の話かさっぱり理解できませんでした


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