プロレススーパースター列伝 | matzz la conga !!                 

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松岡 matzz 高廣 ( Takahiro matzz Matsuoka )東京出身
tres-men (トレメン) / TDO / quasimode (クオシモード) などをはじめ、2015年よりTOP JAZZ ヴァイオリニスト、寺井尚子のバンドメンバーとして、その他各方面で国内外で活躍するパーカッショニスト,DJなど。

quasimodeはいよいよ、
次回作の制作に入り、今が真只中な訳だが、
そんな中ちょっと息抜きに。



山本小鉄さんが逝ってしまった。

小鉄さんと言えば、自分がちびっ子の頃、
大旋風を巻き起こしていた、

プロレスを同世代なら誰もが思い起こす事だろう。

実は先日、その頃何度も読みかえすほど好きだった
ある漫画を買い直した。

それは後ほど語るとして、、

その頃のプロレスと言ったら、

蔵前国技館を満員にして、
テレビでもゴールデンは当たり前。

子供から大人まで国民ほぼ全体が支持していたほど
盛り上がっていた。

それはK1の人気が絶頂の頃なんかよりも
遥かにすごかった。

特に小中学生?の男子の間では、
その話題が出ない日はないほど。

もちろんパソコンもなければ携帯もない。

ビデオも、まだお金持ちのお宅にしか普及してなかった時代
(そこまでではないか、、)

テレビで放映するその時を逃せば、翌日の
学校での話題には完全についていけない。

次々と出てくるスーパースターレスラーに
毎日心躍らせたものであった。

その頃のメディアといえばテレビの他に、
週刊漫画といわゆる「単行本」と言われる
B5くらいの漫画だった。

立ち読み防止の為に、ビニール袋に入っており、
良心的なお店は、立ち読み用に一冊だけ袋からだしてくれてるお店も
あったが、ほとんどのお店では、表紙を見て
中身を想像して買うしか無い、いわゆる
「ジャケ買い」が主流だった。

そんな中おとんに1冊の漫画を買ってもらった。

それが、

「プロレススーパースター列伝」

のハルクホーガンの巻

だった。


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ハルクホーガンといえば、
必殺アックボンバーで、アントニオ猪木を失神させた
今やスーパーヒーロー。

漫画では、彼の生い立ちから、
テレビで見た猪木と戦うために、ミュージシャンから
プロレスに転向、今の地位を築くまでが
猪木の談話とともに書かれているのだが、

漫画の中では
テレビでみるスーパースターの
スターになりあがるまでの苦労や、
様々な人間模様、葛藤、嫉妬、そして友情が
描かれていて、衝撃を受けた。


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アンドレ・ザ・ジャイアント VS ハルク・ホーガン




やはりすんなりとスターにはなれないんだ。

今思えば、その頃から
リアリズムを追求していたのかもしれない。

着色はあるかもしれないが、
本当の生き様に何より感動したのだった。

それ以来、毎月お小遣いから
ブッチャー、タイガーマスク、スタンハンセン、ミルマスカラス
などなど、他の巻を買いまくった。

そこには各レスラーの生き様が詰まっていた。

それは、自分のこれからの人生勉強に
なるのに十分なものであった。

この漫画に掲載されている
ほとんどのレスラーに言える事は、

貧乏や、中傷などに対する、
怒り、悔しさをパワーにしてのし上がっていったという事。

思えば、自分も今までの人生、
いや今もだが、

上から目線の奴らに対して

「いつか見てろよ」という
悔しさをパワーにしてきた部分が大きい。

もちろんそれを越えた上での友情もある。

それは自然と、
この漫画の登場人物たちから学んだ事なのだ。

そして、一概に言えるのが、
各レスラーとも、影でものすごい努力をしてきた事。


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スタンハンセンなんかにしろ、
元々ストリートファイトのプロだったのが、
堂々としかもお金がもらえて喧嘩ができると
入ったプロレスだったが、
それだけではだめだとウェスタンラリアート
を必至に編み出したり、
やはりすべてが努力とそして考える方向だなと。

一番印象に残っているのが、
ブッチャーの巻


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彼は実はスターになるまで下積み生活が
すごく長かった。
巡業の多いプロレス界、
女房にも逃げられ、子供を育てなくてはいけないのと、
バカにされた奴らを見返してやりたい、
ただそれだけ一心で、
のし上がったレスラーだ。

彼は、ある日、戦った空手家に頼み込んで、
シンガポールのその師匠である
ガマ・オテナを紹介してもらい、
入門。

そこで、手刀で相手の喉をヒトツキにする
地獄突きを教わるわけだが、
卒業の最後の師匠の教えで、

「これで君は1対1の喧嘩なら誰にも負けないだろう。
だが、相手が複数の場合、そうはいかない。

そこで、もしそういう場面に出くわしたら、
複数の相手の一番頭、リーダーを探し出し、
そいつをまずやっつけろ。

さすれば、状況は一変、勝てる可能性が出てくるであろう。」
と。

この言葉は自分にとって、
衝撃だった。

他にも、プロレスを通じての
人とのつきあい方とか、
だまされない様にはどうしたら良いか?
などなど、

その後の人生の役にたつであろう
教えが詰まっている
いわば、プロレスラーを題材にした
リアリズムの人生勉強本なのだ。

この漫画は、すごく売れたのだろう、
ジャケ違いの再発本も出ているが、
あえて、当時読んでいた、
初版本を買った。

なぜなら当時の気持ちに一瞬で
戻れるからだ。

実際に手をとってページをめくると、
本当に懐かしくて、それを読んでいた
当時の衝撃を受けた自分に戻った。


そして、現代の良い所は、
その当時見逃した試合や、
見たけど忘れてしまっていた
名勝負をYOUTUBEで見れる事。


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しかし、当時のプロレスの活気のある事といったら
半端ない。

蔵前国技館に、集まった1万5千人の観客の
猪木コールと言ったらすごい。

当時どれだけプロレスが流行っていたがわかる。

また、それぞれのレスラーのテーマ曲、

そのキャラクターに合った曲が聞きたいがために
テーマ曲集のテープも買った。

これも、今の音楽とそこから浮かぶ絵や風景、人物、
メッセージなど、これはここからも影響を受けている
事は間違いない。

■■それとこれは余談だが、
毎回花束を贈呈するお姉さん達。
スーツを着て、花束を持って、
入場してきたレスラーに花束を渡すだけの役目なのだが、
ほとんどが、渡した花束で逆で殴られたり、
中にはリングからレスラーばりに場外へ
落とされてる人いた!
骨折した人もいたであろう、、
当時は大変な仕事だったんだなと、、、
今そんな事あったら大変な騒ぎだろう■■



確かに今のプロレスも面白い。
技も当時に比べれば、遥かに高等なクオリティーだし、
そのレベルは明らかに高い。

だが、実情としてゴールデンタイムに放映してなかったり、
動員数も当時に比べれば明らかに少ないだろう。

それは、メディアの発展により、
情報が溢れ、民衆の娯楽の選択が増えた事に
より、分散化された事も確実にあるが、

なぜか、この状況を見ていると、
ミュージックシーン、しいては
特に日本のジャズシーンとリンクさせてしまう。

メディア云々はおいておいて、
なぜ当時のプロレスがここまではやっていたか?

それは、当時の各レスラーのキャラクターの際立ち、
スター性、そして何より見た事がない人でも
わかる、わかりやすい試合展開、
(猪木は、観客にこびてはいけないと言っていたが)
各レスラーのこういった人生経験のにじみ出た
パワーのオーラなどが功を奏しているのではないだろうか?

個人的に思う。

やはりお宅(マニア)が前に出るようになったら
おしまいなのだ。

確かに彼らが出てくれば、
クオリティーは上がるかもしれない。

でもそれによって、
内輪なものになり、
うわ、、なんかマニアックになってきたなと
それまで支持していた、
一般、もしくは流行に敏感な人たちが
ひいてしまう。

=マニアのマニアのためだけの物になる。

=イメージも悪くなる

=支持する人も減る

という、悪循環になるような気がする。

確かに猪木さんが言うように、
客に媚びてはいけないという言葉は
その通りだと思う。

だが、彼らはその中でも、
いかに来てくれるファンが楽しめる試合が
できるか?ファンが求めている外人レスラーを
よぶか?を日々模索していたとこの本で読んだ。

そのラインは本当に難しいけど、
それがしっかりとした位置にあったから
こそ、あれだけ爆発的に人気があったのだろうなと
思うのであった。

それは今の自分たち、周りのシーンにも
本当に言える事だ。

俺の技を見てくれという演奏には、
同業者か、一部のマニアしか集まらない。

バンドは、すべてのメンバー一人一人の
音が一つになった音がすべてなのだ。

聞いてくれる人はその一つになった音に
感動してくれたり、盛り上がってくれたりする。

(竹善さんが神戸の打ち上げでも言っていて、
鳥肌がたったのを覚えている。)

そして、お金をはらって来てくれるすべての人たちが、
どうしたら来て良かった!とか、
明日からまたがんばれる!と
陶酔して帰ってくれるか?

というのが、バンド、しいては
ミュージシャンが考えなければいけない事なのではないだろうか?

この本を読んでいて、
当時はまったく思わなかった、
そんな事まで考えてしまったのだった。

これからも、
この中に詰まった教訓を
忘れずに、更にがんばっていこうと
誓わさせてくれた本だ。