昨日2月26日の朝日新聞朝刊、生活面の記事はもやしの特集でした。


 私も2月5日に取材を受けていましたので、どのような形の記事になるか非常に興味深く読ませていただきました。そして今までのモヤシ関連特集より一歩先に踏み込んだ、深みのある記事であったと思いました。


 ともかく昨年来の「モヤシブーム」に乗った形で、様々なメディアがもやしを伝えてきましたが、その大抵は安い食材ということに終始されていた感があります。しかしもやしを巡る実情はそんな浅いものではありません。


 そこで記事の中からいつくか印象的な箇所をかいつまんで紹介し、さらに私の考えを挟んでみます。


▼原料になる緑豆は、原産地の中国が天候不順に見舞われ昨年産が大不作、価格は高騰している・・・


・・・ほんの一部の国産ダイズもやしを例外として、今一般的に私たちが「モヤシ」と呼んでいる遮光栽培で育てる白い野菜の原料(種子)のほとんど(100%といいたいのですが・・)は外国の畑で収穫されたものです。常に一定価格で供給されていても、原料の産地が天候不順による不作であったり、他の作物に転作したり、国の政策、つまり自国の食糧確保のため輸出を抑えれば、当然価格は跳ね上がるわけです。今回の原料高騰は大袈裟なものではなく、あって然るべきの「その時」が訪れたのに過ぎません。


▼(モヤシ)生産者の団体、全日本豆萌工業組合連合会(全萌連)は昨年12月、小売業界などに、原料高騰によるコスト増に理解を求める声明文を出した。会員のモヤシ生産者からは「デフレの中、とても値上げはのんでもらえない」「売値は変わらず、億単位の利益が飛んでしまう」という声が寄せられているという・・・


・・・もちろん全萌連が事情を通達したところでそうそう値上げには応じてもらえません。小売側の立場からすれば、「今注目されているモヤシでどれだけ利益があげらるかが大事」でしょう。モヤシ業界の事情がどうあれできるだけ安いモヤシを仕入れて、それを目玉商品にしつつ、さらに店でも利益が出れば理想です。それが小売側にとっての正義になるわけです。利益のとれるもやしをどれだけ並べられるかが重要だということです。


 今、大きなスーパーの野菜売り場に沢山もやしが並んでいるのを見るにつけ、「ああ、このもやし屋さんはどのくらい叩かれているのかな・・」と考えてしまいます。ではどうして大手を含めて、この原料高の状況下でもモヤシが簡単に買い叩かれてしまうのでしょう。様々なご意見があるでしょうが、私個人の考えを述べてみます。


 モヤシ生産者にとって原料の高騰は最大の恐怖ではありません。それよりも、単に出荷量が減らされることの方がはるかに怖いのです。


 多売をしなければやっていけないのがモヤシ製造業です。特に効率化のため多額の設備投資をしたモヤシ会社は多売をしなければ成り立たちません。


 原料が上がったからと、値上げを要求して取引先のバイヤーに嫌われるよりも、さらにコストを下げてその代わりに多くモヤシを買ってもらう道を選ぶでしょう。大口取引先のバイヤーからはその性質を見透かされている感があります。


・・・・


「もやしは、どれも同じなら安いほうがいい」


 昨年、私はこれに近い言葉を3回聞きました。また先日のテレビ東京のモヤシ特集で流れた映像でも、あるスーパーの青果チーフが、


「(価格の)希望に応えられないモヤシ業者は切る」


ような発言を堂々としていました。二つの発言の意味合いは同じでしょう。すべての小売側の共通認識のような気がします。


「小売側のこの認識」そして「多売が宿命付けられているモヤシ製造業」という枠組みの中では、どう考えてもモヤシ業界の共存共栄となるべく、適正価格維持という形にはなりえない気がするのです。


まぼろしの「もやし」求めて・・・
とても長くなりそうな気がしました(汗)。
何度かに分けて話してみます。
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