紛失原稿の交渉

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雷句氏がらみでアクセスが増えたようなので、

アウターガンダムの丸ごと原稿紛失に関して、私の知ってることを

まとめていくつか。


「アウターガンダム」はバンダイ刊、サイバーコミックスに掲載されたもので

単行本として出版されました。


最初の単行本はバンダイより出版されました。

編集は初期がガイナックス、後期がスタジオハードMXです。


その後、ネットオークションで一冊8000円~1万円という値動きになり

メディアワークスでのガンダム単行本再発売の流れから、

「アウターガンダム」も、ということになりました。


原稿の返却は、編集部解散後の編集プロダクション編集者などに要求していましたが

いつまでたっても、ラチがあかないので、バンダイ時代にお世話になった

人達と共に、早稲田の倉庫に直接捜しに行くことになりました。


その時、私以上に驚いたのは、一緒に行った関係者で

「紛失したはず原稿」「何故ここにあるのか分からない原稿」が

出てきたのです。

当時の作家で、近年、いきなり原稿返却があったことに驚いた方も

多かったと思います。

同じように原稿返却を言い出す人間が出なかったら、同じような紛失

になっていた可能性も、少なからずあったと思います。


原稿は見つからずじまい。


単行本は旧単行本の状態の良いものをバラして、

上から手を入れたものを原本としました。

そのため、写植のいじりようが無くなり間違いや、直すべき箇所が

そのままとなりました。


出版を認めていただいたサンライズと、印刷物を原本とする製版を

ほぼ同等に再現していただいた、関係者の方には感謝の言葉も

ありません。


紛失がほぼ確定となった段階で、補償交渉となりました。


とりあえず弁護士相談に赴き、内容証明で紛失原稿の保証を

出版したバンダイに求めました。


すぐに法務担当と紛失原稿の交渉になりましたが、

のらりくらりと逃げられるばかりで、話がまとまったのはずいぶん後。

原稿料の何倍どころか、それ以下だったのですが、

すでに再版単行本は決まっていたので、長引かせずに

ほぼ即決で終わらせました。


ショックだったのは

「松浦は、無くした原稿を盾に金をせびりに来た」と

言われたことでした。

死んだ母が、当時癌末期であったため、看護のために

長期に九州に戻るか否かの時期であったので、

言われたことは間違いではありません。


ですが、本当に口惜しかった。

あの時にちゃんと責任を持ち、原稿管理がされていれば・・。

汚れていても折れていても良い

どんな形でも良いので返してもらえるなら、

迷わずに原稿を取っていたでしょう。

一枚一枚必死で書いていたことを、

担当者自身がくみ取ってくれなかったことが、

口惜しくてたまりません。


補償分ぐらいいくらでも稼いでなんとかした自信はあります。

今でも原稿が戻ってくるなら、全額即座にお返しいたします。

手元にないなら土下座して借金してでも返します。


絵を描く人間と、絵を描かない人間との

問題なのかもしれません。


他人から見れば、へたっぴなものでも

描いた人間には思い出そのものです。

ヨゴレ一つ、ゆがんだ線一本にすらも

あの時の、黙々と書き続けた思い出があります。


寝てもガンダム、醒めてもガンダム。

モビルスーツは、どうすればかっこうよく見えるのか?

アニメの納得のいく設定、納得のいかない設定

取捨選択を繰り返し

全時間を紙切れにたたき込んだものです。


あの原稿は重くなかったですか?

スクリーントーンの重ね貼りと、何度も修正した

一個の人間が持ちうる限りの能力をつぎ込んだ

ベストの代物がアレです。



原稿紛失は茶飯事とまでいう意見も出ています。

私から言えることがあるなら

「弁護士に相談すること」

「内容証明で意思表示を送付すること」

ぐらいでしょうか。


作家自体が原稿を軽んじたら、

駄目であると思います。

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