『みっつBAR』面白い! | 人は気にならないだろうけど私は気になる。

『みっつBAR』面白い!



ニコニコ生放送で見た『みっつBAR』の第一回目がとても面白かったです。


『BAR』と名のつく通り、漫画家の なかむらみつのりさんと佐藤秀峰さんがホストを勤めながら『毎回ゲストを呼んで漫画や人生についてグラス片手に語りあう』と言う番組で、第一回のゲストは漫画原作者の鍋島雅治さんでした。

映画やドラマにもなった『築地魚河岸三代目』『火災調査官(紅蓮次郎)』などで有名な方ですね。


鍋島さんの創作の裏エピソードや、以前鍋島さんが参加していたと言う『劇画村塾』の話と共に、漫画のキャラクター作りやネームに関するテクニックも数多く語っていて、とても面白く勉強になりました。



あまり告知されてなかったせいか、閲覧者が500名足らずと言うのはもったいなさすぎます!

ニコ生のタイムシフト(過去番組の録画を見る機能)は、あらかじめ予約しておくか、プレミアム会員にならないといけないので見れる人は限られてしまいますが、もし漫画の勉強をしていて視聴可能な環境にある方はぜひ見る事をお勧めします。



ただし3時間半もある上、『酒を飲みながら語る』と言うコンセプトなのでグダグダなシーンも沢山ありますのでご注意ください!(生放送で見るぶんにはそこも楽しいんですが・・・)


第1回 みっつBAR「ゲスト:鍋島雅治さん」/ニコニコ生放送
(視聴期限3/27まで)





ちょっと引用して紹介すると
『少年誌は正面顔を描くな』『主人公は必ず左向きに喋れ』
と言う話が面白かったです。(1:16:30頃)


※青字が引用部分です。
 聞き取りの上、少し中略しているので、ちょっとニュアンスが違っているかもしれませんがご了承ください
 文字に起こすとざっくりした印象ですが、実際の口調はやさしく暖かい雰囲気です



少年誌は正面顔を描くな。
それはどうしてかと言うと、ようするに(主人公が)読者と対峙する(ようになってしまう)から。

主人公は必ず左向きに喋れ。
それはどうしてかと言うと、その主人公に少年(読者)は乗り移るから。
主人公のつもりでその言葉(セリフやキメ言葉)を(頭の中で)口にする。

正面顔でそれ(セリフやキメ言葉)を言われると、
特にアクションの多い少年漫画では、
主人公が読み手に向かって攻撃する事になるから。
そこに感情移入しにくくなって、彼(主人公)と自分(読者)と言うふたつの(間に)対立軸が生まれてしまう。

(読者が)より完璧に乗り移る事が出来にくくなるので、
正面顔は描いてはいけないって言う風に僕らは昔教わった。




『昔みんなが感情移入して読んだ漫画』の例として『あしたのジョー』が挙げられるんですが、確かに『燃え尽きたジョー』は左を向いてます。




『あしたのジョー』の単行本を持って無いので、ネットで拾った画像の上、アニメ版で恐縮ですが、有名なクロスカウンターのシーンもジョーは左向きです。



実はジョーが右を向いているクロスカウンターのシーンもあるんですけど、それは『対戦相手の視点で描かれている』(そう読者に読ませようと作者が意図している)と言う事なんでしょうね!



そう言えば僕がサラリーマンの時、研修で
『部下やアルバイトを指導する時や相談に乗る時は、正面で向き合わず少し斜めに座って話せ』
『なぜなら正面は対立の構図になるから』
『取引先に対しても同じ。ビジネスパートナーとして考えるなら少し軸をずらして向け。
蹴落とすライバルだと思うなら正面を向いて闘え』
と教わったのですが、それに少し通じますね。



『主人公は左向き』と言う部分は、僕が前の記事で思いつきで語った『動きのある(アクションを起こす)キャラクターは左を向いている』と言う持論(『iPadで漫画の下描きを描けるか?』の真ん中へん)が裏付けられてとても嬉しかったのですが、これだけだと『良く言われる話』と言えなくもありません。

面白いのはここから先です。



ただし尾田栄一郎さん(『ワンピース』作者)なんかは思いっきり正面顔描いたりしてる。
あれはようするに、
そこ(少年誌は正面顔を描くな論)から発展して読者層の感性が育ったって言うのもあるんですけど、
もの凄く強いキャラクターの仲間に自分がなる(と思いながら読者は読んでいる事を尾田さんは知っているのでは?)
このキャラクター(主人公)には自分はなれないと言う事は、今の若いヤツは気付いているんですよ。


昔(の読者)はみんな『あしたのジョー』になった(気分で漫画を読んでいた。)

(今の読者は)ワンピースのルフィーにはなれないって言うことにみんな気付いている。

でもあの一味(ルフィーの仲間)には加わりたいんです。
だから(正面顔で)『俺の船に乗れ』と言われたいんです。

(そう)じゃないかと僕は分析しているんです。





う~ん!なるほど!
凄い!面白い!

漫画って、いかに『物語の中に入り込めるか』『キャラクターになりきれるか』が重要なんですよね。
初心を忘れていました。
そして『そのシーンで読者をどのキャラクターに感情移入させるか』を作者は誘導する事が出来て、その対称は主人公とは限らないと言うのも目からウロコでした!



実は僕、『ワンピース』は途中までしか読んで事が無かったりします。
超ヒット作なので今さら僕ひとりが否定的な意見言ったからといって何も揺るがないと思うので正直に書きますが、4巻か5巻まで読んだ所で、どうにも物語に入り込めなくて挫折したのです。

それはつまり、『ルフィに感情移入しようとした』のがいけなかったのかもしれませんね。『ルフィ達と一緒に旅をする』と言う読み方が正しいのかもしれません。



僕が初めて見たワンピースは漫画では無く、子供と一緒に見に行った映画版なんですけど、その時は凄い感情移入出来て面白かったので、その後読んだ原作に入り込めなかったのがどうにも腑に落ちなかったのです。
そう言えばその映画は番外編と言った作りで、サブキャラクター(動物なのになぜか医者の犬?猫?タヌキ?)が主人公になっていました。

僕みたいな『主人公に感情移入したいタイプ』(=すなわち子供を映画館に連れて来たお父さん世代)を取り込もうとしてあの映画を『サブキャラクターが主人公の話』にしている・・・・と言う意図が制作者にもしあったとしたら凄いですね!



しかし、鍋島さんの語った『今の読者は主人公にはなれないって言うことにみんな気付いている』と言うのは、『なるほど!』『面白い!』と思うと同時に、ちょっと寂しいですね・・・



『みっつBAR』は毎月第三金曜日放送です!(次回は4/18ですね)
開始時間は固定がどうかわかりませんが(今回は20時からでした)放送前に佐藤秀峰さんのサイトで告知されると思います。
次回も楽しみです!








画像/ニコニコ生放送『みっつBAR』スクリーンショット
   『あしたのジョー』漫画版・アニメ版より引用しました。


追記


やはり好評だったようで、佐藤 秀峰さんのサイトでテキストが公開されました。
実際の包装よりも簡潔にわかりやすく加筆修正されているみたいですので、
ちょっと長いかもしれませんが読みごたえアリですよ~






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