本論文は、分割胚移植と胚盤胞移植の累積生産率を検討したものです。
Hum Reprod 2016; 31: 2442(ベルギー)
要約:2010〜2013年に刺激周期で初回体外受精による新鮮単一胚移植を実施した36歳未満の方1000名を対象に、妊娠成績を後方視的に検討しました。内訳は、day 3分割胚移植群377名とday 5胚盤胞移植移植群623名であり、1回の採卵で2回目以降の移植は凍結胚を用いました(この場合には複数胚移植もあり)。新鮮単一胚移植での生産率は、分割胚31.3%、胚盤胞37.8%であり、胚盤胞で有意に高くなっていましたが、1回の採卵での累積生産率は、分割胚52.6%、胚盤胞52.5%と有意差を認めませんでした。また、ひとりの赤ちゃんを出産するまでに要する移植回数は、胚盤胞移植で有意に少なくなっていました。
解説:本論文は、刺激周期における1回の採卵での分割胚移植と胚盤胞移植の累積生産率は同等ですが、妊娠までにかかる時間は胚盤胞移植で短くなることを示しています。体外受精では、どうしても胚盤胞を狙いがちですが、胚盤胞になかなかならない方もおられます。胚盤胞しか取り扱っていない施設では、胚盤胞にならない方には「あなたは妊娠できません」とお話されるようですが、そのような方は分割胚移植で妊娠可能な方が少なくありません。赤ちゃんになるためには、胚盤胞を経由しないと着床できませんから、このような方は生体内では胚盤胞になっているわけです。つまり、生体内の環境と体外の環境がまだイコールではないことを意味します(生体内の方が体外より良い環境)。本論文の結論から、刺激周期における1回の採卵での累積生産率は同等ですから、胚盤胞にならない方はぜひ分割胚移植をトライされることをお勧めいたします。