嬉しい報告 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2016.3.7「Q&A1022 流産3回、体外受精はダメで人工授精で妊娠」でアドバイスをいただいた者です。

先生から「人工授精一本に絞るのも良い」とのアドバイスをいただき、煮詰まっていた治療に前向きな気持ちになっていた時、4回目の妊娠が発覚しました。黄体補充なしの人工授精をした周期でした。妊娠がわかってから、バファリンの服用だけではまたダメかもしれない…先生も「もし、胎児に染色体異常がなければ、「妊娠を継続できない何かがある=不育症」であり、バファリンだけでは治療が不十分なことを意味しています。」と言われたし…と思い、ヘパリンを打つことを即決。胎嚢確認後すぐヘパリンを始めました。

不妊クリニックから総合病院へ転院後、健診の度に担当の産科医から「論文を読んだが、あなたの数値ではヘパリンをうつ医学的根拠がない。意味がない」と言われ、処方をやめられそうになりましたが、無理を言って自己責任で20週まで続けました。不妊クリニックの先生からも「ヘパリンの止め時が問題だ」と言われていたので、素人考えではあるのですが、20週なら胎盤も出来あがっているだろうと夫婦で決めたリミットでした。そのヘパリンのおかげか、今まで越えられなかった6週の壁、7週の壁を無事に超えることができました。その後、丸だった胎芽に手足ができ、二頭身になり、そして手足をバタバタと動かし、どんどん成長する姿を見ることができ、今では31週にして2000gという中々大きめな胎児に育ちました。胎動も元気にあります。

健診の度に、心臓が止まっているのではないかという不安で泣いたり、ヘパリン処方に関しての担当医との軋轢など色々ありましたが、それも今では良い思い出です。後は無事にこの子を産んで、育てる…。本当なら無事に出産するまで何があるかわからないのでお礼のメッセージを控えようと思っていたのですが、もし今、ヘパリンを打つことを迷っている方がいるなら、私の経験を伝えたいと思いメッセージしました。いくら医学的根拠がなくても、すがれるものがあるなら賭けて見るのも手だと…確かに、自費で、しかも長期に渡ってとなると、肉体的にも金銭的にもしんどいです。でも、私のように流産を繰り返している人の最後の手段としてヘパリンは有効なのではと思います。ただヘパリンに関する経験が少ない先生も多いように思います。

松林先生なら、私のような症状の場合(PE抗体キニノーゲン(+)が0.490)、何周までヘパリンを打つべきだと考えますか。数値が明らかに高いわけでも低いわけでもない、私のような場合です。しかも「PE抗体キニノーゲン(+)」というのは普通の病院では計らない項目だそうですね。不育症専門でないと計らない珍しい項目だけ、若干ひっかかってしまった場合、何周まで打つのが妥当だったのでしょうか。今後の参考に、教えていただければ幸いです…

最後になりましたが、ヘパリンを打つ勇気をいただき…感謝しています。
本当にありがとうございました!!



コメント:PE抗体キニノーゲン(+)が0.490でしたら、私は迷わずヘパリンを使います。タイミングや人工授精の方は妊娠判定日から、体外受精の方は胚移植当日から開始し、胎盤が完成する妊娠16週まで継続します。ヘパリンには血液凝固抑制作用以外に、胎盤形成促進作用があります。このふたつの作用が奏功したのだと思います。