本論文は、体外受精で出産したお子さんの周産期予後を、同一人物の自然妊娠と比較した興味深い報告です。
Fertil Steril 2016; 106: 710(米国)
要約:2000〜2010年に米国の3箇所の施設で単胎妊娠で出産した方(体外受精32,762名、非体外受精3,863,480名)の妊娠予後をその兄弟姉妹の妊娠予後も含めて調査しました。
体外受精 非体外受精
出生時体重 3296.0g 3334.3g
在胎日数 269.0日 270.7日
兄弟姉妹(いずれも非体外受精)
出生時体重 3340.6g 3397.9g
在胎日数 269.6日 270.3日
体外受精を行うと、在胎日数がやや短くなり、出生時体重がやや軽くなりました。
体外受精 非体外受精 修正相対危険度
低体重児 8.4% 6.0% 1.38
早産 11.6% 8.0% 1.51
兄弟姉妹(いずれも非体外受精)
低体重児 6.8% 4.9% 1.33
早産 9.7% 7.9% 1.20
体外受精の実施の有無にかかわらず、体外受精を必要とした場合には、低体重児と早産が有意に多くなりました。
解説:体外受精の場合には、低体重児と早産が多くなるとの疫学(統計)調査があります。本論文は、体外受精を必要とした場合には、体外受精の実施の有無にかかわらず、低体重児と早産が多くなることを示しています。本研究では体外受精で誕生したお子さんと非体外受精で誕生したお子さんを比較していますが、このような研究はこれまでありませんでした。本論文は、体外受精を必要とする方は、何らかのマイナス要素があり、妊娠予後が不良になることを示唆しています。
このような考えは、臨床に携わっていると少なからず思うことです。いわゆる「reproductive perfoemance(妊娠出産のパフォーマンス)がよくない」ということです。なかなか妊娠しない方は、妊娠中にも様々なトラブルに見舞われることも少なくありません。しかし、その理由については明らかにされていません。