本論文は、帝王切開は次の胚移植の成績に影響を与えるかについて検討したものです。
Fertil Steril 2016; 106: 311(米国)
要約:2008〜2014年に、過去の妊娠で妊娠20週以降の分娩があった方194名を対象に、その後の初回新鮮胚移植での妊娠成績を、既往経膣分娩群109名と既往帝王切開群85名の2群に分け前方視的に検討しました。2群間の妊娠判定陽性率、臨床妊娠率、生産率に有意差を認めませんでしたが、胚移植に要した時間は、既往経膣分娩群と比べ既往帝王切開群で有意に長く(157秒 vs. 187秒)、カテーテルに付着した粘液(27% vs. 45%)と出血(8% vs. 21%)が有意に多くなっていました。
解説:米国の帝王切開率は30%を超えていますが、2010年以降は一定しています。かつては、帝王切開後には不妊症の頻度が増えるのではないかと考えられていましたが、全て後方視的検討や観察研究であり、前方視的検討はほとんどなされていません。また、子宮筋層の帝王切開瘢痕部には42〜58%の方で欠損が認められます。この欠損部には、しばしば粘液や出血の貯留が見られます。このような欠損部の存在、粘液、出血が妊娠率に影響するのではないかと考え、本論文の検討が行われました。本論文は、帝王切開後には移植が少し難しくなり30秒ほど余分に時間がかかり、粘液や出血の付着が増加しますが、妊娠率には影響しないことを示しています。