☆妊娠治療の盲点②:医師の視点と患者さんの視点の違い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

<医師の視点と患者さんの視点>
医師と患者さんの目標はどちらも「妊娠」すること、これは間違いありません。しかし、医師の視点と患者さんの視点は異なっています。医師は多くの患者さんからの経験や論文からのデータで総合的に判断しますが、患者さんは自分自身の経験(+知人の経験)で判断します。論文では多くの症例から検討したものほど信頼性が高くなりますが、少ない症例では「たまたま」という可能性(誤差、バイアス)があります。医師はより確率の高い方法を選択するようにしていますが、患者さんは他人の成功例を踏襲しようとします。しかし、他人はくまで他人ですので、その方法がその患者さんに合っているかは誰にもわかりません。

<医師の選び方>
医師が患者さんの治療にどこまで思い入れを持っているか(親身になっているか)、これが重要です。熱意のない治療は「その場限り(その場しのぎ)」になりかねません。妊娠治療はそもそも確率の低い治療です。体外受精でさえ、40%で上出来、30%で普通、20%で成績不振という世界です。他の医療とは比べものにならないくらい低い確率です。妊娠判定(ー)の時に、「これはしょうがないんです」というスタンスではなく、「少しでも改善の可能性を探っていきましょう」というスタンスの医師がより好感度の高い医師だと思います。満足度の高い医療は、たとえ結果が出なくてもいかに納得できるプロセスをとっているかだと思います。医師~患者関係は、上下関係ではなく、対等な関係、つまり患者さん側に立った診療が望ましいと考えます。もちろん、ヒト対ヒトには相性というものが存在します。相性の合わない医師~患者関係は良好とは言えません。

<クリニックの選び方>
妊娠治療には通院開始(初診)通院終了(卒業)があります。インプットアウトプットです。インプットとアウトプットの関係で毎日の患者数が決まります。したがって、初診の予約が取りやすいクリニックあるいは診察の待ち時間が短いクリニックは、インプットが少ないかアウトプットが多いクリニックであり、予約が取りにくいクリニックあるいは診察の待ち時間が長いクリニックは、インプットが多いかアウトプットが少ないクリニックとなります。さらに、医師の人数が診療速度の律速段階となりますので、医師が何名なのかも関与します。つまり、妊娠率が良いクリニックは、「初診の予約がとりやすい」のに「診察の待ち時間が短く」「医師がそれほど多くない」しかも「評判の良い」クリニックです。ぜひ、判断材料としてください。妊娠治療には、スピード感が重要です。「初診まで3ヶ月待ち」はいただけません。