本論文は、流産処置と早産の関係についてメタアナリシスを行ったものです。
Hum Reprod 2016; 31: 34(オーストラリア)
要約:流産処置と早産の関係について2014年までに発表された論文の中で、コホート研究あるいはケースコントロール研究を記した21論文1,853,017名のメタアナリシスを行いました。流産処置歴あり群は、流産処置歴なし群と比べ、早産リスクが1.29倍(37週未満)、1.69倍(32週未満)、1.68倍(28週未満)と有意に上昇しました。流産処置は、待機療法と比較しても、早産リスクが1.19倍(37週未満)と有意に上昇していました。また、複数回の流産処置を実施した方では、早産リスクが1.74倍(37週未満)と最も高くなっていました。
解説:流産処置は婦人科手術の中では、最も行われている術式ですが、流産処置と早産の関係については賛否両論がありはっきりとした見解はありませんでした。本論文は、流産処置と早産の関係についてメタアナリシスを行ったところ、流産処置と早産リスクの関連を示しています。
特に、流産処置を待機療法と比較して有意差があること、流産処置の回数増加でリスクが増大することから、流産そのものではなく処置自体が早産リスクをもたらすものと考えられます。流産処置には、頸管拡張と子宮内操作が含まれます。推測の域を出ませんが、頸管拡張は子宮頸管の防御機構の低下を引き起こす可能性、子宮内操作は子宮内膜のダメージによる胎盤形成不全をもたらす可能性が考えられます。
しかし、待機療法の場合には、2週間以内の自然排出が50%、1か月以上かかる方も少なくありません。また、子宮内容物の染色体検査ができませんので、流産の原因が胎児側の異常だったのか判断することができなくなります。
本論文で取り上げられている研究は全て観察研究ですから、エビデンスレベルが低くなります。したがって、正しい結論を導き出すためには、大規模な前方視的検討が必要です。