卵子の温存には禁煙と適度な飲酒がお勧め!? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、ライフスタイルが残存卵子数に及ぼす影響を検討したものです。

Hum Reprod 2016; 31: 150(米国)
要約:米国2箇所で、1999~2013年に良性疾患による子宮摘出術の際に卵巣を摘出した方110名を対象に、術前にライフスタイルの質問票調査を行い、手術で摘出した卵巣の未発育卵胞(NGF)数を顕微鏡下でカウントしました。年齢、BMI、ピル使用歴、喫煙歴で補正後、アルコール消費量がNGFと有意な関連を認めました。すなわち、軽度(1日1杯未満)~中等度(1日1~3杯)の飲酒をされる方は、全く飲酒されない方より、NGFが有意に多くなっていました。また、大量の飲酒、BMI、ピル使用歴、喫煙歴はNGFとの関連を認めませんでした。

解説:卵胞は、原始卵胞→一次卵胞→二次卵胞→前胞状卵胞→胞状卵胞の順に発育します。未発育卵胞(NGF)は原始卵胞から一次卵胞を、発育卵胞は二次卵胞から胞状卵胞を示します。いわゆる残存卵子はNGFのことを指します。つまり、倉庫に貯蔵してある卵子です。一方、発育卵胞は現在発育している卵胞のことです。また、AMHは、一次卵胞から前胞状卵胞の顆粒膜細胞で作られますので、主に発育卵胞から出ていると考えると良いです。さて、これまでにライフスタイルとNGFの関連が報告されていますが、一定の見解は得られていません。加齢と喫煙は間違いなくNGFを減少させることが知られていますが、アルコールに関しては明らかにされていませんでした。本論文は、軽度~中等度の飲酒は、NGFが有意に多くなることを示しており、適量の飲酒が勧められます

NGFが多くなることは、卵巣での卵子のプールが増えることですから、卵子の供給が低下することを示してます。すなわち、卵子の温存になります。これにより、中等度の飲酒をされる方では、2.2年閉経が延期されるとの報告もあります。また、本論文では過去の喫煙はNGFに影響しないことを示しています。今からでも遅くありません、ぜひ禁煙してNGFを温存して欲しいと思います。