ルイボスティー(aspalathus linearis, rooibos tea)について質問がありましたので、論文を調べてみました。
①Andrologia 2014; 46: 867
要約:オスのラットにルイボスティー(2%、5%)を52日間投与し、その変化を検討しました。体重、精巣重量、テストステロン(男性ホルモン)、抗酸化作用に変化を認めませんでしたが、精細管の直径、精巣上皮細胞の高さ、精巣上体細胞の高さが有意に増加しました。未発酵のルイボスティーは精子濃度、運動率、生存率を有意に増加させ、尖体反応には影響しませんでしたが、発酵したルイボスティーは生存率を有意に増加させるのみで、精子濃度と運動率は変わらず、 尖体反応を有意に増加させました。また、ルイボスティー投与により、クレアチニン濃度増加と腎臓重量の増加、GOTとGPTの減少を認めました。
②Br Poult Sci 2008; 49: 55
要約:鳥類はライフスパンの長さから、ヒトの予備研究に向いています。オスのウズラにルイボスティーを100日間投与したところ、体重が有意に減少しました。一方、メスのウズラでは体重が増加傾向となり、めんどりでは体重が有意に増加しました。また、ルイボスティーはめんどりの卵子産生を有意なほどは増加させませんでしたが、高齢時(生後1年)での卵子減少が有意に少なくなっていました。
解説:ルイボスティーは南アフリカ産のお茶で、抗酸化作用をもつため、アンチエイジングに役立つのではないかと最近注目されています。「抗酸化作用」というキーワードを拡大解釈した結果、美肌効果、老化防止、糖尿病治療効果、アトピー改善効果、花粉症改善効果、アルツハイマー病治療効果、そして卵子や精子の老化防止効果などがうたわれていますが、必ずしもその全てが証明されているわけではないようです。論文検索を行なったところ、このうち2型糖尿病治療とアルツハイマー病治療に関しては動物実験のデータが報告されていました。
不妊症の領域でも「抗酸化作用」は卵子や精子のダメージの防止に役立つのではないかと考えられていますので、ルイボスティーが良いのではないかと言われたわけです。しかし、実際に論文を検索してみると、今回示した論文が検索されるのみで、これをまとめると下記のようになります。
①ルイボスティーは、抗酸化作用により精巣構造を改善し、精子の状態を良好にする可能性がありますが、 尖体反応が起きてしまうと、逆に妊孕性(妊娠できる力)を損なう可能性が出てきます。また、長期投与による肝機能や腎機能への悪影響も考慮すべきと考えます。
②ルイボスティーは、体重の変化をもたらすこと、加齢に伴う卵子減少が抑制される可能性を示しています。
動物実験のデータがそのままヒトに反映されるわけではありませんので、今後のヒトでの研究が必要だと思います。