卵巣反応不良の方は卵丘細胞のmiRNA発現に異常あり | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、卵巣反応不良の方は卵丘細胞のmiRNA(micro RNA)発現に異常があることを示しています。

Fertil Steril 2015; 103: 1469(トルコ)
要約:2010~2011年に体外受精を行なった方189名の卵丘細胞を保存しておき、下位1/4の採卵数の方(卵巣反応不良群)と上位3/4の採卵数の方(卵巣反応正常群)の卵丘細胞のmiRNAを検討しました。卵巣反応不良群では、16個のmiRNA発現が増加しており、88個のmiRNA発現は減少していました。特に、miR-21は卵巣反応不良群で5倍の発現増加を示しました。miR-21の中では、miR-21-5p発現は増加し、miR-21-3p発現は減少していました。この事実は、miR-21の前駆物質が増加しているのではないことを示します。また、KGN細胞(卵丘•顆粒膜細胞様腫瘍)のmiR-21-5p発現とmiR-21-3p発現は、高濃度E2存在下でどちらも増強しましたが、低濃度E2存在下ではどちらも変化しませんでした。この事実は、卵巣反応不良群でのE2濃度低下はmiR-21発現変化とは無関係であることを意味します。

解説:卵巣反応不良の遺伝子レベルでの原因は明らかにされていませんでした。最近、miRNAが顆粒膜細胞の分化、増殖、アポトーシスに重要な役割を担っていることが明らかにされましたので、卵丘細胞のmiRNAが卵巣反応不良と関連があるのではないかとの仮説のもとに本論文の研究が行なわれました。本論文は、miR-21、特にmiR-21-5p発現の増加が卵巣反応不良の指標になる可能性を示しています。

このような研究が進むと、卵巣反応不良の遺伝子レベルでの原因が明らかにされますので、治療法が開発される可能性が出てきます。これまでは、卵巣機能が悪いと諦めていた方に新たな治療法が生まれるかもしれません。