卵巣刺激を変えても正常胚数は同じ? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

今後はこのような研究が増えてくるのだと思います。本論文は、CGHを用いた胚盤胞の染色体検査を行なったところ、初回および2回目の刺激方法の変化にかかわらず、染色体異常のない正常胚の頻度は変わらなかったことを示しています。

Fertil Steril 2015; 103: 947(米国)
要約:2011~2013年に2回採卵を行なった方116名の胚盤胞の染色体検査をCGH法で行い、その結果を後方視的に検討しました。初回の染色体正常な胚盤胞が1個以上の方と0個の方の2群で比較したところ、次のようになりました(有意差の認められた部分を赤字で表記)。

初回正常胚盤胞  1個以上    0個
年齢       37.4歳    40.3歳
採卵数(初回)  14.8個    11.7個
採卵数(2回目) 16.5個    12.7個
分析胚数(初回)  4.6個     3.3個
分析胚数(2回目) 5.2個     4.0個
正常胚数(初回)  1.8個     0個
正常胚数(2回目) 2.3個     0.8個

どちらの群も、刺激日数の増加やhMG投与量増加は正常胚盤胞数の増加には結びついていません

解説:この結果はある意味驚きです。37歳で15個採卵して正常胚盤胞は平均2個、40歳で12個採卵して正常胚盤胞は1個未満ということになるからです。しかも、刺激法を変えても大きな変化はないことになります。もっと多くの症例での検討が必要ですが、私自身かなりショックを受けています。