地球温暖化により女児が増加!? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

面白い着眼点の論文は、大変興味深いものです。本論文は、地球温暖化による赤ちゃんの男女比の減少(女児の増加)と、気候の寒暖の激しい時(暑い夏と寒い冬)に赤ちゃんの男女比が減少(女児の増加)することを示しています。

Fertil Steril 2014; 102: 1364(日本)
要約:1968~2012年までに日本で出産した赤ちゃんの男女比と妊娠12週以降の胎児死亡の性別を後方視的に検討しました。この44年間は徐々に気温が上昇していますが、それと一致して増加したのが妊娠12週以降の胎児死亡の男児の割合であり、逆に減少したのが出産した赤ちゃんの男女比(女児の増加)です。特に、極めて暑かった2010年の夏と、極めて寒かった2011年の冬では、男児の胎児死亡が有意に高く、その9ヶ月後の女児の出生が有意に増加していました(妊娠期間は約9ヶ月です)。

解説:出生児の男女の比率は一定でやや男児が多いことが知られていますが、最近、欧米では男女比に変化が生じていると報告されています。自然災害や環境汚染物質がその理由ではないかとされていますが、緯度の増加により女児が増加するという報告や平均気温が高いと男児が多いとする報告、季節性変動があるというものなど、気候と男女比の関連が示唆されています。地球温暖化により、過去100年で0.69℃平均気温が上昇しましたが、フィンランドとニュージーランドの報告では男女比は変わっていません。一方日本では、さらに温暖化の程度が激しく、過去100年で1.15℃平均気温が上昇しています。本論文は、日本における温暖化の影響を調査したところ、赤ちゃんの男女比が減少したことを示しています。

世界の気候調査によると、1880年以降で最も暑い夏は2010年でした。日本でも同様に2010年が最も暑い夏でした。暑い夏と寒い冬はリンクしているため、2011年冬が最も寒くなりました。本論文は、この気候の寒暖の激しい時(暑い夏と寒い冬)に赤ちゃんの男女比が減少することも示しています。

本論文は気候の変化と男女比を統計的に結び付けていますが、その因果関係を示すものではありません。たとえば、気候の温暖化には大気汚染が関与している可能性がありますので、大気汚染による男児のダメージが大きいことも考えられます。いずれにしても、男児は外部のストレスに弱いことが示唆されます。

日本では女児を希望される方が多いのですが、気候の変動が激しい日本、普通に生活していても女児が多くなるようです。中でも緯度の高い北海道や寒暖の差が激しい盆地などに住むのがお勧めなのかもしれません(証拠はありません)。