採卵個数で閉経時期の予測が可能!? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

生まれつき持っている卵子の数(原始卵胞数)には個人差があるため、閉経時期が40~60歳と20年もの差が生じます。これまで、閉経時期の予測は、AMHや胞状卵胞数(AFC)が用いられてきました。本論文は、刺激周期の際の採卵個数により閉経時期の予測が可能であることを示しています。

Hum Reprod 2014; 29: 2530(オーストラリア)
要約:19~44歳の女性1585名に対し、同一の卵巣刺激(ロング法+FSH製剤200~225単位+hCG 10000単位)による採卵を行いました。なお、生理不順、PCOS、卵巣手術歴、子宮内膜症、CD3のFSH>15、卵巣嚢腫、骨盤腹膜炎の既往があるものは除外しました。一方、イタリアのGOERMスタディーから2635名の閉経女性のデータを分析しました。年齢と採卵数をプロットしたところ、AMHと同じ形状の曲線が得られました。採卵数がゼロになるまでの年数を、このグラフを計算式にしたものから予測しました。これをもとに、各年齢において閉経している方の割合をプロットしたところ、GOERMスタディーのデータより1年早いだけで全く同じ形の曲線が得られました。以上のデータから、X歳でY個採卵できた場合の閉経年齢を予測するチャートを作成しました。たとえば、31歳で4個採卵できた場合の閉経年齢は46歳、35歳で10個採卵できた場合の閉経年齢は51歳、30歳で15個採卵できた場合の閉経年齢は53歳となります。

解説:閉経は後でわかるものです。なぜなら、「生理がなくなってから1年経過した時」、最後の生理の時期にさかのぼって「閉経」と言うからです。閉経は女性の健康と密接な関連があります。たとえば、閉経が遅いと乳癌のリスクが増大します。一方、閉経が早いと骨粗鬆症、心血管疾患、認知症、卵巣癌、大腸癌、呼吸器疾患、泌尿器疾患のリスクが増大することが報告されています。このため、閉経時期の予測は予防医学的に重要です。閉経の平均年齢は51歳、原始卵胞数が1000個程度になると、AFCが0~1個になり、閉経すると考えられています。これまで、閉経時期の予測には、AMHやAFCが用いられてきました。しかし、AMHやAFCと実際の採卵数に食い違いがあることもしばしば経験します。本論文は、刺激周期の採卵数による閉経時期の予測が、実際の閉経データとピッタリ一致することを見いだしたもので、AMHやAFCによる閉経時期の予測より実用的である可能性を示唆します。

著作権の関係からチャートをお見せできないのが残念ですが、興味のある方はぜひ原著を参照してください。論文の取り寄せ方法は、2013.3.9「☆論文の取り寄せ方法について」を参照してください。