習慣流産の方が出産するまで | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

流産を何度も繰り返すことは、なかなか妊娠しないこととは違う辛さがあります。本論文は、習慣流産の方が妊娠•出産するまでの期間を調査したところ、一般の方と同じであることを示しています。

Hum Reprod 2014; 29: 1146(オランダ)
要約:オランダでは、2004~2009年に原因不明習慣流産となった方364名に対して、多施設RCT研究(ALIFEトライアル)を行っています。原因不明習慣流産の定義として、2回以上の連続した流産、夫婦染色体正常、子宮形態異常なし、抗リン脂質抗体症候群なし、としました。このうち251名の方を追跡調査したところ、半年で56%、1年で74%、2年で86%の方が妊娠し、このうち65%の方が出産に至りました。妊娠までの期間の中央値は21週、出産までの期間の中央値は102週でした。過去の流産回数が、妊娠•出産の予後不良を予測する唯一の因子となりました。なお、妊娠された方の13%のは体外受精でした。

解説:本論文で示された、習慣流産の方が妊娠•出産するまでの期間は、まさに妊孕性(妊娠できる力)のある一般の方と全く同じです。習慣流産の方は、次の妊娠に対して極度の不安を抱いてしまうのは、人間としての正常な反応だと思います。心のケア(カウンセリング)の重要性は勿論ですが、本論文のデータを示すことで安心して妊娠•出産に臨んでいただくことができるのではないかと考えます。