本論文は、人工授精の妊娠に寄与する因子を大規模に調査したものです。
Fertil Steril 2014; 101: 994(フランス)
要約:2005~2011年に851組の夫婦で合計2019回の人工授精を行った結果から、妊娠率に寄与する因子を分析しました。女性は40歳以下とし、人工授精は最大4回までに制限を設けました。最大卵胞が、hMG使用時は16~18mm、クロミフェン使用時は20~22mmで排卵のトリガーとしました。排卵のトリガーを使用した場合は36時間後、自然のLHサージの場合は24時間後に人工授精を行いました。なお、発育卵胞数が4個以上の場合と0個の場合には人工授精をキャンセルしました。周期あたりの妊娠率14.8%、生産率10.8%、夫婦あたりの妊娠率35.1%、生産率は25.6%でした。また、妊娠率に有意に寄与する因子は、排卵障害(あり)、出産歴(あり)、FSH(=<7)、排卵誘発剤(hMG使用>クロミフェン使用)、排卵トリガーの使用(あり)、女性の年齢(=<38歳)、発育卵胞数(>=2個)、子宮内膜厚(10~11mm)、注入した運動精子数(>100万)、用いた精子(新鮮精子>凍結精子)です。
解説:ESHRE(欧州生殖医学会)の報告によると、欧州では2009年に年間162,843件の人工授精と135,621件の体外受精が行われ、妊娠率は、人工授精12.4%、体外受精28.9%となっています。他国と比べても人工授精の件数や妊娠率が高くなっており、多くの工夫が施されているものと考えます。
私もこれまでの診療経験から、より妊娠率の高い方法への改良を加えた結果、本論文で示された方法に近い下記のものにたどり着いています。
排卵誘発剤使用(クロミフェン+hMG)
排卵トリガーの使用(GnRHa or hCG)
女性の年齢により回数制限(35歳以下6回、36~37歳4回、38~39歳2回、40~42歳1回)
FSH(<10)
発育卵胞数(1~2個)
子宮内膜厚(>=8mm)
注入した運動精子数(>100万)
新鮮精子使用
本論文による科学的根拠が示され、非常に心強く感じます。妊娠率に最も貢献するのは、排卵トリガーの使用ではないかと考えています。排卵日を合わせるだけではなく、排卵の時間を合わせた人工授精を行っています。