凍結胚移植の赤ちゃんは大きく生まれる | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

凍結融解胚移植は、新鮮胚移植と比べ妊娠率も高く、他にもメリットがあることから広く行われるようになってきました。
1 妊娠率が高い(凍結融解胚移植>新鮮胚移植)
2 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の予防
3 子宮外妊娠の予防
4 周産期リスク(分娩前の出血、早産、低出生体重児、周産期死亡)の低下
2013.1.19「☆☆凍結融解胚移植のすすめ」を参照してください)
特に日本の凍結技術は世界一であるため、日本の多くの施設では凍結融解胚移植が主に実施されています。凍結融解胚移植にデメリットはないのでしょうかという質問がありましたので、論文をご紹介致します。

Hum Reprod 2014; 29: 618(デンマーク)
要約:①1997~2006年に凍結融解胚移植で出生した896名、新鮮胚移植で出生した9480名、自然妊娠により出生した4510名を比較しました(いずれも単胎妊娠)。また、②1994~2008年に同じ母体から凍結融解胚移植と新鮮胚移植でそれぞれ1名ずつを出生した666組を比較しました(新鮮→凍結が550組、凍結→新鮮が116無味)。大きい赤ちゃんを平均+2SD、巨大児を4500g以上と定義し、母体年齢、出産歴、児の性別、出生年、出生順で補正しました。①凍結融解胚移植は新鮮胚移植の1.34倍有意に大きい赤ちゃんを出生し、1.91倍有意に巨大児を出生しました。また、凍結融解胚移植は自然妊娠と比べ、1.41倍有意に大きい赤ちゃんを出生し、1.67倍有意に巨大児を出生しました。②一般に第2子の方が第1子より大きく生まれますが、凍結融解胚移植は新鮮胚移植と比べ大きい赤ちゃんを出生しました。

解説:日本を含め世界各国からの報告では、凍結融解胚移植で大きな赤ちゃんが生まれるという一致した見解となっています。本論文は、北欧ならではの大規模な人口動態調査により、国家規模の調査がなされただけではなく、兄弟姉妹での比較を初めて行ったものであり、有益な情報を示しています。従って、凍結融解胚移植で大きな赤ちゃんが生まれる原因は、母体側の要因ではなく、凍結融解操作によるものではないかと考えられます。巨大児の出産では、新生児仮死、肩甲難産、新生児低血糖、新生児呼吸障害などを生じる確率が高くなります。一方、凍結融解胚移植では小さな赤ちゃんが少ないため、未熟児が少なくなります。動物では、体外受精をすると赤ちゃんが大きくなることが知られていますが、ヒトでは体外受精の新鮮胚移植では赤ちゃんが小さくなります。ヒトで赤ちゃんが大きくなるのは、母体のBMIが高い場合、出産歴がある場合、長く体外培養した場合との報告があります。赤ちゃんが大きいというのは、メリットなのかデメリットなのかについては、現段階では不明です。

また、胚盤胞の凍結融解胚移植では1卵性のふたご(1絨毛膜性双胎)が増加することが知られています。ハイリスク妊娠となりますので、こちらはデメリットと言えるでしょう。
2013.8.2「ふたごは寒い地域に多い?」を参考にしてください。