卵巣刺激についての質問が多いですので、私の卵巣刺激についてまとめてみました。
私の卵巣刺激方法は、ズバリ「その方に適切な方法を選択する」ことです。刺激周期が基本ですが、低刺激周期や自然周期も行います。全胚凍結が基本ですが、新鮮胚移植も行います。胚盤胞だけではなく、初期胚(分割胚)移植も行います。あるひとつの方法しか行わないと、それに適さない方が切り捨てられてしまうからです。その方に合わせて、臨機応変に対応するようにしています。
刺激周期の場合、3種類の排卵抑制方法(ロング法、ショート法、アンタゴニスト法)と、10種類程度の刺激方法(5種類のhMG•FSH製剤の中から2種類を選択した組み合わせ)があります。AMHと年齢から、あらかじめ刺激方法を決めていますが、スケジュール開始日(生理3日目)の胞状卵胞数(AFC)を見て微調整をしています。hMG•FSH製剤はLHの含有比によって強弱がありますので、2種類のhMG•FSH製剤の組み合わせを行うと、刺激のアップダウンが5段階(2ランクダウン、1ランクダウン、同等、1ランクアップ、2ランクアップ)に調整できます。AFCとAMHに食い違いがある場合や、刺激の途中の反応パターン(採血結果、卵胞の状態)が思わしくない場合には、5段階調整をします。
このように、多くのパターンを行う方法は、危機管理(リスクマネージメント)の観点からはあまり好ましくありません。全てが画一的で全く同じやり方の方が、間違いがなく、処理速度が早く(スピードアップ)できるからです。このような理由から、多数の症例を手がけるクリニックの多くは、決まったパターンで行っていることが多いように思います。
また、FSHが高い方(>20)やAMHが低い方(<0.1 ng/mL)では、FSHとE2をうまくコントロールする特別な方法を行っています。この詳細については論文発表後にご紹介したいと思います。さらに、ランダムスタート法も取り入れています。ランダムスタート法を行うと、生理とは関係なく、卵胞はいつでも育とうとしていることがわかります。ランダムスタートの応用編として、生理3日目の状態が好ましくない時に、1周期見送るのではなく、1週間程度遅らせて、丁度良い状況になったところから刺激を開始することもできます(タイムロスが少なくなります)。このように、医師に関与できる部分は「卵巣刺激」が一番大きく、まさしく「ホルモンのプロ」としての医師の腕の見せ所ではないかと思うわけです。