分割胚でも凍結融解胚移植 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

昨今、凍結融解胚移植が広く行われるようになってきました。2013.1.19「凍結融解胚移植のすすめ」でも述べたように、凍結融解胚移植にはいくつかのメリットがあります。本論文は、day 3分割胚での凍結融解胚移植の成功率に寄与する因子を分析したところ、アシステッド•ハッチングをした場合とOHSS(卵巣過剰刺激症候群)回避の凍結の場合に妊娠率が高くなることを示しています。

Hum Reprod 2013; 28: 1768(中国)
要約:2008~2012年に、1481名の夫婦に、のべ2313回凍結融解胚移植(day 3凍結→day 3移植)を行い、妊娠率に寄与する因子を後方視的に分析しました。合計22個の因子をそれぞれ検討したところ、年齢、凍結の理由、アシステッド•ハッチング、子宮内膜厚、ダメージを受けた割球の有無、移植胚数、良好胚数、カテーテル先端の血液付着の有無の8項目が抽出され、これらについて多変量解析を行いました。アシステッド•ハッチングをした場合にはしなかった場合の2.105倍の妊娠率(オッズ比)、OHSS回避の凍結の場合には余剰胚凍結の場合の2.145倍の妊娠率(オッズ比)を示しました。また、オッズ比はこれらより低いものの、良好胚数、移植胚数、子宮内膜厚も妊娠率に有意に寄与していました。

解説:本論文は、day 3(8分割)の時期での凍結融解胚移植のデータを示しています。凍結融解技術は日本が世界のトップを走っているといっても過言ではありませんので、日本では一歩進んで胚盤胞の凍結融解がメインとなっています。本論文は外国のデータですので、分割胚の凍結融解ですが、OHSS回避すなわち全胚凍結で成績が良いことを示しています。これは、OHSSをきたすような刺激をした場合に着床環境が悪くなることの裏返しでもあります。
また、胚盤胞が成長すると胚の外側の殻(透明帯)を破って細胞が出てきます。これを孵化(ハッチング)といいます。この状態でなければ着床することができません。しかし、凍結操作により透明帯が固くなり、ハッチングしにくくなります。アシステッドハッチングはこれを助けるための処置です。

2012.12.28「採卵前の黄体ホルモン(P)上昇」
2013.1.14「OHSSの予防」
2013.1.17「凍結融解胚移植では子宮外妊娠のリスクが低下」
2013.1.19「☆凍結融解胚移植のすすめ」
2013.1.24「凍結融解胚移植では周産期のリスクが低下」
2013.3.18「採卵後6日目の胚盤胞では凍結融解胚移植を!」
2013.3.23「最も妊娠率の高い方法は?」
2013.3.29「凍結融解胚移植は妊娠中毒症を回避できる」
2013.7.3「hCGに長期間暴露すると着床によくない?」
も併せてご覧ください。