☆妊娠を目指す女性は運動した方がよいか | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

アスリートの女性は月経周期が長かったり無月経である方が多いです。妊娠を目指す女性は運動した方がよいのでしょうか、運動しない方がよいのでしょうか。本論文は、BMI >25の方は運動すべきで、BMI <25の方は軽めの運動に留めておくのがよいことを示しています。

Fertil Steril 2012; 97: 1136
要約:Snart Gravid Studyというデンマークの前方視的研究に基づき、18~40際の3628名の女性にネットを通じて質問票調査を行い、妊娠までに要した期間(time to pregnancy = TTP)を集計しました。激しい運動は、ランニング、高速サイクリング、エアロビクス、体操、水泳を、軽い運動は、ウオーキング、レジャーのサイクリング、ゴルフ、ガーデニングとしました。BMI < 25 の方では、週に5時間以上の激しい運動をする方は、運動を全くしない方に比べて妊娠率が低下していました。BMI > 25 の方は、激しい運動をより多くした方が妊娠率が増加しました。また、BMIにかかわらず、週に1~5時間の軽い運動をする方は、運動を全くしない方に比べて妊娠率がわずかに増加していました。

解説:2006年、デンマークでは、国民の健康増進のため、2021年までに75%以上の大人が1日30分以上の軽い運動をするよう目標を設定しました。運動は、糖尿病、心血管疾患、うつ病、ある種のがんのリスクを低下させることが知られていますが、女性の妊孕性(妊娠できる力)への影響については明らかではありませんでした。ただし、後方視的研究では、激しい運動は妊娠率を低下させ、軽い運動は妊娠率を増加させるというデータがありました。日本人女性の多くはBMI < 25 ですから、あまり運動しすぎないようにする方が妊娠には望ましいと言えるでしょう。
Snart Gravid Studyは、デンマークの妊娠を目指す女性の前方視的研究です。このような研究ができる環境にあるのが羨ましく思います。