☆歯周病と妊娠 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

歯周病は歯肉に菌が入って慢性的な炎症を起こす疾患です。歯のことなんて妊娠とは全然関係ないと思っている方が多いと思いますが、歯周病と妊娠は多いに関係があります歯周病と早産に関連があることは結構昔からよく知られています。本論文は、歯周病がある女性は妊娠しにくいことを示しています。

Hum Reprod 2012; 27: 1332
要約:歯周病と妊娠に関するオーストラリアの多施設共同RCT研究にSmile studyというものがあります。歯周病は、4mm以上の歯肉ポケットが12箇所以上存在する場合と定義しました。3737名の妊婦さんのうち自然妊娠された3416名を対象としました。このうち1014名(29.7%)に歯周病の方がおられました。妊娠するまでの期間(TTP=time to pregnancy)を調査したところ、歯周病の女性はTTPに7.1ヶ月を要し、そうでない女性の5.0ヶ月と比べ有意に長くなっていました。他にTTPが長くなる要因は、年齢、喫煙、BMI>25でした。

解説:歯周病は、心血管疾患、2型糖尿病、呼吸器疾患、腎疾患、妊娠中のトラブルと関連があることが知られています。歯周病は歯肉に嫌気性菌が入って慢性的な炎症を起こし、血流に乗って全身に影響します。歯周病でポピュラーな菌は、Porphyromonas gingivalisとStreptococcus sanguisです。歯周病の治療により、全身性の炎症の軽減が認められ各疾患の症状が軽減されます。妊娠中の歯周病の治療により早産率が減少するという報告がありましたが、最近のメタアナリシスでは否定的で、妊娠前からの管理の必要性が求められています。歯周病の治療は、男性の精液所見を改善するという報告もあり、男性不妊との関連も示唆されています。妊娠を目指すご夫婦は一度歯医者さんの健診を受けてみることをお勧め致します。