☆妊娠中のアルコール | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

妊娠中のアルコールはダメということは一般常識と思いますが、実際にどのようになるかはあまり知られていませんので、いくつかの論文をご紹介いたします。妊娠中にアルコールを飲むと、胎児に様々な悪影響が出ます。赤ちゃんのために、妊娠したらアルコールを飲まないように努力して欲しいと思います。

CDC Weekly report 2012, July 20
J Neurosci 2012; 32: 15243
Arch Dis Child 2012; 97: 812
Alcohol Clin Exp Res 2012; 36: 1973
要約:2006~2010年の米国での女性のアルコール摂取調査によると、非妊娠女性の51.5%、妊娠中の女性の7.6%がアルコール(過去30日以内に少なくとも1杯のアルコール飲料)を摂取していました。また、アルコールを沢山飲んでいる女性(過去30日以内に4杯以上のアルコール飲料)は、非妊娠女性の15.0%、妊娠中の女性の1.4%でした。沢山飲んでいる女性の年齢別頻度は18~24歳で最も高く、月3.3回で1回につき6.7杯飲んでいました。
妊娠中にアルコールに暴露した胎児は、FAS(胎児アルコール症候群)やFASD(アルコール関連障害)を引き起こし、米国では少なくとも1%がそうであると集計されています。特に、顔面の形態異常(薄い上唇87%、短い二重まぶた82%)、知能障害(IQ低下)、成長障害(体重、身長、頭囲、低脂肪率:少なくとも9歳までは調査済み)が高頻度で生じます。顔面の形態異常は、しばしば染色体異常と見間違えます。これらは、妊娠中のどの時期にアルコールを摂取しても起こりえます

解説:2004年までは、NIAAA(米国アルコール疾患協会)のアルコール多量摂取の定義が月に5杯以上でしたが、2004年に定義が月4杯以上に変更されました。これは、アルコールに対しての目が厳しくなっているということを意味します。上記のAlcohol Clin Exp Resの論文では、アルコールを沢山飲むという定義を、1日2杯以上か1回に4杯以上(少量は1日1杯未満)としています。本論文は自己申告に基づくものですので、実際はもっと多くのアルコールを飲んでいるかもしれません。平成21年の国民健康・栄養調査によると日本人で飲酒習慣のある人(1日あたり1合以上の飲酒を週に3回以上)の割合は、男性は36.4%、女性は6.9%です。WHOの統計(2000~2001年)によると、世界で最もアルコールを飲む国は、ヨーロッパ(純アルコールとして年12L以上)、次に北米•ロシア•オーストラリア(年8~12L)、そして日本•北欧•ブラジル(年5~8L)、アフリカ•中南米•中国(年1~5L)、飲まないのはイスラム圏(年0~1L)という順です。